2003年4月22日(火)「しんぶん赤旗」
暴力団関係会社から資金援助を受け、指名手配中の組員の捜査状況を大阪府警に問い合わせた松浪健四郎衆院議員に対し、保守新党は「役職停止」処分と政治倫理審査会(政倫審)への「説明」で乗り切ろうとしています。
保守新党の二階俊博幹事長は、「処分」決定後の記者会見で、議員辞職はしないで衆院政治倫理審査会で釈明する理由として「不当な疑惑を受けた」場合という衆院政倫審規程を持ち出しました。
しかし、今回の問題は、松浪氏自身が暴力団関係者とのつながりという核心となる事実関係を認めており、同氏が「不当な疑惑」を受けたといえるものではありません。
記者会見でも「不当な疑惑というが、本人も認めているではないか」との質問が出ましたが、二階氏は「不当な部分もある。だから(政倫審に)出て証明する」とのべ、苦しい弁明に回りました。
政倫審は、議員の行動が「議会制民主主義の健全な発展に資する」ために作成された政治倫理綱領と行為規範に反するかどうかを審査する場です。松浪氏自身が事実関係を認めている以上、政倫審での「説明」がふさわしくないのは明らかです。
自民、公明両党は保守新党の姿勢を「支持」。小泉純一郎首相も「(政倫審で)本人の意向を聞くのが大事だ」とのべました。暴力団関係者との癒着という問題について毅然(きぜん)とした態度をとれない政権与党の責任が厳しく問われます。
「処分」を受けたはずの松浪氏本人も、反省どころか報道に対し、「曲解、誤解を招いたり、より大きく報道される」と注文をつけました。
しかし、秘書給与の肩代わりは、松浪氏本人が認めていること。松浪氏は、相手が暴力団組員だったことを「(当初は)知らなかった」と釈明していますが、組員であることが分かってからも肩代わりを続けたことについては沈黙したままです。
捜査状況を大阪府警に問い合わせたことも、松浪氏本人が認めたことです。松浪氏は「捜査状況の照会ではない」とのべていますが、大阪府警は松浪氏に「(組員から)連絡があれば出頭するよう、議員から促してほしい」と返答したことを明らかにしています。この事実だけでも国会議員の職務と両立しえません。
保守新党は、松浪氏が秘書給与の肩代わり分について、政治資金収支報告書を訂正したことなどから、政治資金規正法などの「法的問題」がないことを理由に松浪氏を擁護しています。自民、公明両党も、同党の姿勢を追認しています。しかし、この姿勢は、暴力団関係会社から資金提供を受けること自体の意味をうやむやにするものです。
暴力団関係者からカネをもらっても、届け出さえすれば問題はないという姿勢は、政治的道義的責任が欠如しているというほかありません。(小林俊哉記者)