日本共産党

2003年4月22日(火)「しんぶん赤旗」

制裁解除を急ぐ米

イラク経済支配へ、しゃにむに

安保理でも批判あがる


 【ワシントン20日坂口明】先制攻撃戦争でフセイン政権を崩壊させたブッシュ米政権は、石油資源を含むイラクの経済的支配を確保するため国連安全保障理事会による対イラク経済制裁の解除を急いでいますが、他の安保理諸国の批判が厳しいことから、今後、三、四本の安保理決議を採択させ、制裁解除を段階的に解除する方針をとるもようです。米紙ニューヨーク・タイムズ十九日付などが政府当局者の話として報じました。

 ブッシュ大統領は十六日、セントルイスのボーイング社工場での演説でイラク制裁の解除を要求しました。

 同制裁は、一九九〇年にイラクがクウェートを侵攻、併合する国際法違反を犯したのに対し、安保理が科したのが最初。その後、変遷を経ながらも継続されてきました。

米企業潤す石油を狙う

 十三年間に及ぶ制裁はイラク経済に打撃を与え、医薬品不足などで高率の乳幼児死亡率をもたらすなど国民を苦しめてきました。その緩和・解除を求める諸国に対し米国は査察継続を主張してきました。しかしブッシュ氏は従来の主張を覆し、フセイン政権が崩壊し「イラクが解放されたので国連は経済制裁を解除すべきだ」と述べました。

 ところが現行制裁の大枠は、湾岸戦争の停戦条件を決めた九一年の安保理決議六八七で規定されています。同決議は生物・化学兵器の「国際監視下での破壊・除去の無条件受け入れ」と「核兵器取得・開発禁止の無条件同意」をイラクに求め、査察官による大量破壊兵器(WMD)廃棄の確認を制裁解除の前提条件としています。

 ブッシュ政権が今、元国連査察官も募集してWMD発見を急ぐのは、それを示せなければイラク侵略の大義名分を失うからばかりでなく、制裁解除が達成できないからです。しかし侵略開始後の「WMD発見」のニュースは、その後いずれも否定され、WMD発見は難航しています。

 米国が対イラク制裁解除を急ぐのは、イラクの経済活動を統制してきた国連のくびきを断ち切ることにより、石油を含むイラクの経済的支配という同国侵略の戦争目的の一つを達成する自由を確保したいからです。

 特に米国の負担なしにイラク石油の売却益をイラク「復興」にあて、参入する米企業を潤すことを狙っています。

大義名分なく一貫性もなく

 そこで米政権は、複数の安保理決議の段階的採択により、侵攻を国連に追認させ、査察官によるWMD廃棄の確認を制裁解除の条件とする六八七決議の死文化を図るものとみられます。

 これは、WMD開発・保有をフセイン政権打倒の大義名分とし、侵攻容認の新たな決議がなくとも六八七決議など過去の安保理諸決議によりイラク攻撃の国際法的根拠はあるとしてきた米国の従来の主張と一貫性がないものとなっています。


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