日本共産党

2003年4月23日(水)「しんぶん赤旗」

自衛官募集に個人情報

自治体提出名簿 健康状態、保護者名など記載


 防衛庁が、自衛官募集のための適齢者名簿の提出を各自治体に要請し、提供を受けた情報のなかに「保護者の情報」や「健康情報」といったプライバシー性の高い情報も含まれていたことが二十二日、明らかになりました。

 石川県と自衛隊石川地方連絡部が二〇〇〇年十一月に作成した「自衛官募集事務の手引」は、市町村が行う募集業務に「適齢者情報の提供」をあげ、「適齢者の情報には、住民票に記載されている住所、氏名、生年月日、世帯主との続柄及び世帯主氏名のほか、職業、健康状態、技術免許等募集上参考となる事項で判明しているものを含む」と明記。「市町村長は、…適齢者の状況を常に把握し、…適時地連(自衛隊地方連絡部)部長に通報するものとする」と書かれています。

 防衛庁は、同県の自治体から提供を受けた適齢者名簿のなかに健康情報が含まれていたこと、七尾市から提供を受けた名簿のなかに、保護者の記載があったことを認めました。しかし、それ以外のプライバシーにかかわる情報が含まれていたのかは、現在調査中としています。

 防衛庁は、自治体から適齢者名簿の提供を受け始めたのは、一九五五年ごろからと説明。六六年十一月には、都道府県に対し文書で適齢者名簿の提出を依頼しています。また、同名簿を作成している自治体は、全自治体の三割に達しているといいます。

 同庁は、提供を求めている情報は、住所、氏名、生年月日、性別の四項目だけとし、住民基本台帳法の「違反にあたらない」としています。しかし同法は、四項目の閲覧は可能としていますが、情報提供の規定はありません。


自衛官募集に個人情報提供

 防衛庁が自衛官募集にあたり、自治体から個人情報提供を受けていた問題で、識者から寄せられた談話を紹介します。

徴兵へ地ならし

軍事評論家 林茂夫さん

 ひどいね。いつでも徴兵制を導入できるようにするための、地ならしだと思います。

 いまの若い人は知らないと思いますが、旧軍の時代でも、いきなり強制的な徴兵制が導入されたわけではありません。当時の憲法には、たしかに兵役義務が書かれていました。しかし、徴兵検査はやっても、初めは建前としては強制ではないとされていました。徴兵検査で、どの地域に健康で兵として使える人間がいるのかを調べておき、陸軍幼年学校や予科練(海軍飛行予科練習生)が不足しているときには、軍の地域担当に圧力をかけ、志願兵を出させたのです。

 かつても自治体が自衛官の適格者名簿を作成し、自衛隊に提供していたことがマスコミで暴露され、“徴兵制への準備か”と、批判を浴びたことがあります。それで、防衛庁もおとなしくしていたのだろうと思っていましたが、やっぱり、着実に実績づくりを進めていたわけです。

論外の違法行為

大阪自治体問題研究所 黒田充さん

 防衛庁・自衛隊が、住民基本台帳法上閲覧が可能とされている、氏名、住所、生年月日、性別の四情報以外の情報を自治体に提供を求め、提供を受けていたことは、なんらの法的根拠もないことで論外の違法行為です。

 四情報についても自治体側が特に「閲覧以外」の方法で自衛隊に提供することは、法的根拠なしに特別な便宜を提供することで重大な問題です。

 有事法制との関係では、自治体や国民を動員する際の基礎となる個人情報が、こうして自衛隊に流出、集積されていることになります。

 総務省は、四情報についてはもともと閲覧可能だから提供しても問題ない(片山総務相)といっているようですが、そうとは言いきれません。例えば「性別」は性同一性障害の人にとっては人に知られたくない情報でしょう。

 現行の行政機関保有個人情報保護法がこのような配慮に欠けるという問題点を含み、昨年の住基ネット施行に際して、新しい行政機関保有個人情報保護法案が手当てされるべきだと主張された経緯からいっても、住基ネットの存在の可否も含め総合的な論議が必要でしょう。


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