2003年4月23日(水)「しんぶん赤旗」
イラクのサダム・フセイン体制から迫害を受けパリに亡命しているイラク共産党のライド・ファミ中央委員に、体制崩壊後のイラク共産党の方針と展望について話を聞きました。同党はフセイン政権の打倒を目指しながら、米英軍による軍事攻撃に反対しました。(パリで浅田信幸)
十五日にイラクのナシリヤでおこなわれたいわゆる反対派の会議に私たちは招待されていません。そもそもあの会議は米軍のフランクス司令官が招集したもので、招待されても私たちは絶対に参加しません。イラクの今後を検討する会議は国連が主催すべきだというのが私たちの立場です。組織の仕方に大きな問題があり、そのために代表性という点で限られたものでした。
私たちは複数主義的なイラクの建設を展望しています。複数主義というのは政治的にはもちろんですが、宗教的にも民族的にも複数主義であって、イラク人の誰もが市民として暮らせる、そういう社会のことです。
このような社会の実現に向けて過渡期を考えなければなりませんが、私たちは国連に後援され、すべての政治勢力を含んだ暫定政権を樹立する必要があると考えています。政治的に幅の広い暫定政権です。
この政権の任務は、基本的な社会的インフラ、公共サービスの再建に取り組み、自由な選挙が行われる条件をつくることです。占領軍は速やかに撤退し、イラク人が自分たちの将来を自由に決定できるようにならなければなりません。
再建過程にある暫定政権には、一つ重要な条件が付きます。それは、政権にも個人にも国の富や資源を処分する権限はいっさい与えられるべきではないということです。そうした権限は、イラク人自身の選択によるイラク人の合法的な政権が樹立されて初めて持つべきものです。禁輸措置の解除が米国によって提起されていますが、私たちは、これもイラク人の正当な代表が参加できるようになってからの問題だと主張しています。
当面緊急の課題としては、一般的には民主主義を固めることです。共産党は民主主義的、愛国主義的な勢力と幅広く連合することを考えていますが、まだどのような政治勢力がどうなるのか、わかりません。同時に、権力を独占したり、覇権的立場をめざそうとする勢力には警戒しなければならないし、私たちは反対します。
共産党独自の緊急の課題は、なんといっても党を早急に再建することです。二十年、三十年と非合法のもとに置かれ、国外に亡命した者も少なくありません。困難も小さくはありませんが、すでにバグダッドをはじめ主な都市のすべてで共産党が再建されつつあります。
イラク共産党は一九三五年に創立され、四〇、五〇年代にはイラクで最大の動員力をもつといわれました。七〇年代、ソ連との関係改善をめざす当時のバース党政権の下で合法化され、国民愛国戦線という名の挙国一致体制で入閣しました。
フセインが副大統領として実権を握っていた時期の七八年七月以降、バース党以外の政党の軍との接触禁止に違反したとの理由で党員の逮捕、処刑が続き、フセインが七九年七月に大統領に就任する直前の同年五月に非合法化されました。それ以後、バグダッドで地下活動を展開。最近明らかになったフセイン政権に殺害された処刑者リストの中には同党活動家の名前もあると伝えられます。
イラク北部のクルド人地域では九三年の大会で、クルディスタン共産党と改称。この党の書記長はイラク共産党中央委員会のメンバーでもあります。
九七年七月の大会でフセイン独裁政権打倒と、アラブ人とクルド人の民主的な統一連邦国家を提唱しました。党首はハミード・マジード・ムーサ書記長。