2003年4月24日(木)「しんぶん赤旗」
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全米で大きく盛り上がった反戦運動は、イラクのフセイン政権の崩壊、米国による占領という事態の展開のもとでも、そのエネルギーを失っていません。さらに新たな運動の展望も見通しています。
「サダム・フセインの銅像が倒されるのを喜ぶイラク国民を見て最初に思ったこと――あの反戦運動の連中はいまどこにいるのだろうか」
米軍がバグダッド入りし、フセイン大統領の銅像を引き倒した翌日(十日)の米大衆紙デーリー・ニュースに掲載された投書です。多くの米マスコミが米軍を「解放者」として描く中で、反戦運動に対する皮相な見方が広がっていることを示しています。
そうしたなか、十二日に「国際ANSWER(戦争阻止と人種差別停止を今こそ)」が全米各地で反戦集会を行いました。首都ワシントンの会場は、ホワイトハウスに近い「フリーダム・プラザ」。開会時間には閑散としていた広場も、デモ行進開始のころには数万人にふくれあがりました。
「米国は中東から出ていけ」、「国連に任せよ」、「帝国主義者の戦争反対」、「戦争の費用は貧しいものが払っている」―掲げられるプラカードもさまざま。「IRAQ」(イラク)の「Q」を消して「N」に変え、「IRAN」(イラン)にしているものなど、「戦線」の次の矛先をシリアやイランに拡大しようとしている米政府の狙いをつくスローガンもありました。
翌十三日付の米紙ワシントン・ポストも「行進参加者は、新しいサインと変わらない情熱をもたらした」との見出しで、「戦争よりも米軍の占領に焦点をあてた」と指摘しました。
「私たちはすでに運動を変えてきたのです。戦争前はそれをやらせない、戦争が始まったらそれを終わらせる。今度は、占領を終わらせ、米軍を撤退させることに変えていきます」
こう語るのは、米国最大の反戦連合体「平和と正義のための連合」(UFPJ)の取りまとめ役、レスリー・ケーガンさん。新たな事態のもとでの反戦運動の方向を明確に打ち出しています。
「重要なことは、少なくとも米国では、反戦運動がこの一カ月でも広がっているということです。イラクをめぐる危機は、米国の外交政策がもたらす一部であるということへの理解の度合いも非常に高い。占領反対にギアをシフトするだけでなく、米国の外交政策全般にまで、反戦運動はその創造的なエネルギーを発揮することになると思います」
さらに展望は、政治闘争にもおよびます。
「私たちがいま考えているのは、この運動の焦点を連邦政府予算の問題に向けることです。この戦争のために組まれた補正予算は七百九十億ドルです。米国内のどの州も深刻な経済問題を抱え、予算の赤字の総額は八百億ドルになります。戦争をしなければこれが危機的な状況にある予算のために使えるのです」
そしてその視野の先には、二〇〇四年に行われる大統領選挙、連邦議会選挙があります。イラク戦争反対の運動のエネルギーは、反戦にとどまらず、米国の政治のあり方そのものを問う運動に転化する可能性を秘めています。
(ワシントン、ニューヨークで山崎伸治 写真も)