2003年4月25日(金)「しんぶん赤旗」
イラク問題での二十二日の国連安保理会合に、国連監視検証査察委員会のブリクス委員長が覚書を、国際原子力機関のエルバラダイ事務局長が声明をそれぞれ提出し、この二つの国連査察団による大量破壊兵器査察再開が必要だと強調しました。米国は拒否する態度です。覚書、声明の要旨と、この間の米首脳発言などを紹介します。
ブリクス国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)委員長の覚書
イラクにおける大量破壊兵器その他の禁止された品目の存在の疑惑にかんして真実を見いだすことは、国際社会全体が共有する関心事である。依然として有効ないくつかの安保理決議のもとで、イラクへの制裁体制に影響を及ぼす安保理諸決議の前提として、UNMOVICとIAEAによる評価と結論が必要である。
UNMOVICの委任事項、課題と権限は、いくつかの安保理決議に記述されている。安保理による廃止か修正が起こらない限り、実際上可能な限り効力を保ち続ける。基本的な決議六八七(一九九一年)は第二十二項で、必要なイラクの軍備解体が完了し、実施中の監視・検証プログラムが承認されたと安保理が合意した場合は、制裁(とりわけイラクに由来する商品および製品の輸入禁止)の効力は失われると予見している。
決議一四四一(二〇〇二年)は第二項で、「軍備解体プロセスを完了するための強化された査察体制」を立ち上げることを決定した。UNMOVICとIAEAは、この点でのみずからの努力を安保理に報告した。
これらの決議は、現在の状況を考慮して作成されたものではなく、一字一句適用することは不可能かもしれない。このため、UNMOVICとIAEAは、今後の方向について安保理による指針を必要としている。新たな指示が与えられるなら、諸決議の中心点が考慮されるだろう。
UNMOVICもIAEAも安保理からの委任を受けて、個々の国家から独立して活動する。その職員らはいかなる政府あるいは国連外の当局者からの指令を求めても受けてもいけない(国連憲章第一〇〇条、IAEA規則第七条)。
イラクにおける軍備解体活動は、中東に大量破壊兵器のない地帯を創設するという目標に向かう歩みとみられている。
これらの基本点がいくつかの新しい指示として重要であると考えられたなら、査察機関が個々の政府や機関から独立した存在であり続ける必要がある。査察のためにイラクのあらゆる施設に立ち入り、イラク人に面接する完全な権利を持ちつづける必要がある。彼らは、樹立されるイラク当局から、また連合国当局から、援助と協力を必要としている。
UNMOVICが提出した作業計画案は採用されるべきである。(米英)連合国の査察チームが発見したものが、限られた時間のうちに確証され、裏づけも可能になるかもしれない。国連緒決議にもとづく国際的監視計画は、大量破壊兵器のないイラクを持続することへの地域と世界の高いレベルの信頼を維持するために必要とされるかもしれない。
三月一日から六月一日の期間の次期四半期報告を安保理に提出するつもりである。
エルバラダイ国際原子力機関(IAEA)事務局長の声明など
「国際原子力機関(IAEA)はできるだけ早くイラクでの業務を再開すべきだ。IAEAは、イラクの核軍備解体を検証するための、核不拡散条約(NPT)と継続的な安保理決議の双方に由来する合法的な権限を持つ唯一の機関であり続ける。われわれの復帰の形態について安保理の指示を待つ」(二十二日の国連安保理非公式会合への声明)
「われわれは昨年十一月に査察を再開してから順調な進ちょく状況にあった。われわれは、安保理の指揮に従って、戦後に活動を再開し、イラクには核兵器計画がないことについて安保理から求められている確証を継続的に示す用意がある」(中東オンライン電子版四月一日)
ラムズフェルド国防長官の発言(四月十七日)から
「(大量破壊兵器について)何かを発見できると私自身は思っていない」「やるべきことは、どこを探せばいいかを教えてくれる人物を見つけ出すことだ。何かが見つかると期待して、あちこちを探し回る宝探しのようなものではない」「査察官は何も発見しなかったし、われわれが発見するとも思えない」
ブッシュ大統領の最後通告演説(三月十七日)から
「米国と他国の政府が収集した情報から、イラクの大量破壊兵器保有と隠ぺいは疑いない」「テロリストがイラクの支援で入手した大量破壊兵器を使って、わが国やその他の国の何十万という人々を殺りくするかもしれない」「恐怖の日が訪れる前に、行動が間に合わなくなる前に、この危険を排除する」「サダム・フセインが権力を握っている限り、イラクは武装解除しない」
パウエル国務長官のABCインタビュー(三月八日)から
「われわれは査察団よりももっとよい情報をもっていると思う。われわれが使える手段は査察団よりも多い。査察団は情報機関ではない」