2003年4月26日(土)「しんぶん赤旗」
米国による戦争と占領下のイラクは破壊と混乱に直面しています。数千人の市民の命が奪われ、行政、病院、学校、公共サービスが破壊されました。
イラク戦争と占領に反対するシリアの立場は一貫しています。昨年十一月に国連安保理決議一四四一が採択された際、シリアがこれを支持したのは、決議が外交と査察に時間を与え、自動的な攻撃を拒否するものだったからです。この決議を実行していれば戦争は避けられたはずですが、米国はこれを無視して戦争に突き進みました。
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戦争も占領も、何一つ問題を解決しません。問題は外交的努力、対話によって解決されるべきです。イラク国民の自決権を奪い資源を独占し国政を直接支配するようになれば、必ず国民によって拒否されます。
これはイラクに限ったことではなく、世界中の国についていえることです。イスラエルの占領・支配にたいしパレスチナ人が激しく抵抗している事実は、それを象徴的に示しています。
イラク暫定統治機構づくりの準備会合が行われていますが、組織者は米軍で、出席したイラク人も、ほとんどが米国と英国に住んでいた反体制派の人々です。かれらはイラク国民のごく一部しか代表していません。
いま、バグダッド、モスル、バスラ、カルバラなど多くの都市で、「占領の即時終了、米軍の即時撤退」を掲げたデモが行われています。この動きはこれからさらに大きくなっていくでしょう。占領が終わらない限り、イラク国民の苦難もなくならないからです。
イラク国民が米軍を歓迎しているかのような報道もありますが、これは主に米系メディアによるトリックです。クウェートに住んでいた人々がイラクに入り、「米軍歓迎」の演出に使われています。多くのイラク人がフセイン体制の崩壊を喜んでいることは事実ですが、米軍歓迎と同じことではありません。
米軍のイラク支配はアラブ全体でも大きな抵抗にあうでしょう。米軍が駐留してきたクウェートでは、米兵が米軍のクレジットカードで買い物をしようとして店主から拒否される事態も起きているのです。
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米国はいま、シリア政府にたいし「フセイン政権の幹部をかくまっている」とか「化学兵器をもっている」などと非難し、威嚇していますが、ばかげたこととしかいいようがありません。
シリアが米英によるイラク戦争に反対したのは、イラク国民の利益を考えたからであって、イラクのフセイン体制を支持したからではありません。シリアは一九八〇年代のイラン・イラク戦争や九〇年に起こったイラクのクウェート侵攻に対して、フセイン政権と厳しく対立してきました。
またシリアの「大量破壊兵器」に関しては、イラクでも、米軍はこれまで一千カ所も疑惑とされた施設を捜索しましたがなにも見つかっていません。米国の主張はシリアへのいいがかりです。
シリアは国連安保理に全中東地域を大量破壊兵器のない地域にしようという決議案を提出しました。しかし米国は、「全体としては賛成」といいながら、さまざまな理由をつけて決議への支持を拒否しています。
(ダマスカスで小泉大介記者)