2003年4月28日(月)「しんぶん赤旗」
【ロンドン25日西尾正哉】英BBC放送のグレグ・ダイク局長は二十四日、米メディアのイラク戦争の報道ぶりについて「あまりに愛国的で不偏性を欠いている」と批判しました。
ロンドン大学で講演したダイク氏は、「個人的には、米国の放送メディアが戦争中、疑問もなく放送を続けたことにショックを受けた」「BBCは愛国主義とジャーナリズムを混同してはならないことをイラクで心がけた。これ(混同)が起きたのが米国で、継続すれば米の電子ニュースメディアの信頼性を損なうだろう」と指摘しました。
ダイク氏はとくに、戦場の前線から生放送を送るなど注目された米放送局「FOXニューズ」について、「感情的な愛国主義」で最も人気を集めたと批判。「FOXがこのような傾倒した政治的立場を取った事に驚いている」と述べました。
ダイク氏は、その一方で政治報道が弱まったとし、「政府に対し節を曲げない勇気をもったニュース報道機関がないこととも相まって、政府やホワイトハウス、国防総省をさらにパワフルにしている」と指摘。さらに、「多くの米放送ネットワークが星条旗に身を包んだ。愛国主義と不偏性を交換した9・11同時多発テロ以来、特にそうだ」と述べました。
英BBC放送は、BBCのラジオ放送が米国で四百万人の視聴者を得るなど米での視聴者が記録的に増加。ダイク氏は最近、米国を訪問したとき「何人もの人が、アメリカのニュースメディアは信頼できないのでBBC放送を聞いて戦争報道をフォローしていると私に伝えた」と述べました。
イラクでの戦争中、英BBC放送の「中立性」には保守層からの批判が上がるなど、メディアの役割をめぐって英国内でも議論があります。
BBCはイラクが陥落した際、「バグダッドの恐怖の水準はサダム・フセイン統治下よりも大きい」とニュース番組で放送し、英閣僚は“愛国心がない”などと批判しました。
ダイク氏の講演を報じた英タイムズ紙二十五日付は、「BBCの愛国的役割の明確な否定は、イラクで命の危険を冒した兵士の家族への冒涜(ぼうとく)だ」との批評家のコメントを紹介しました。ダイク氏は講演で、「商業主義の圧力は、他のメディアを感情的な愛国主義のFOXに追随させようとするが、BBCにとっては恐るべき誤りとなろう」と述べました。