2003年4月29日(火)「しんぶん赤旗」
米紙ニューヨーク・タイムズ二十三日付は「ハンス・ブリクスの追放」と題する論評で、ブッシュ政権が国連査察団のイラク復帰による大量破壊兵器武装解除への国連の関与に反対し、単独で大量破壊兵器を捜索しようとしていることを批判しました。
同論評は、二十二日の国連安保理非公式協議でのブリクス国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)委員長の発言を紹介し、「(米国人による)捜索は独立した専門家たちの存在によって支援されるべきだし、いかなる発見の信頼性も国連によって確認されることで高まる」と指摘しています。
同論評は、「イラクにおける米国の軍事的勝利は、イラクの禁止兵器の発見と廃棄についての問題も一変してしまった」とのべ、「長期にわたって査察団を妨害してきた隠匿の試みは終わった。イラクが生物・化学兵器を使用するという当面の危機はなくなった」と指摘。しかし「イラクが有効な非通常兵器計画を持っていたかどうかという中心問題は依然として残っている。米英軍はまだ何も発見していない」として、大量破壊兵器問題は「米政府が戦争に突入する主要な理由としてきたもので、決して小さな問題ではない」と述べています。
論評はさらに、「ホワイトハウスは、安保理に公正な報告書を提出したブリクス氏を嫌っている」とし、その理由は「彼が米国の望んだような、イラクの不正行為に関する反論の余地のない証拠を出さなかった」ことにあると指摘。しかし「いま米国は、イラクの科学者からの積極的な協力なしに、このような証拠を提示することがいかに困難かを知りつつある。米国の怒りには根拠がない」と述べています。
論評は「(六月に引退する)ブリクス氏とその後継者らは米国の音楽に合わせて踊らないかもしれないが、まさにそのことが、これらの問題に関する彼らの言明がいかに価値のあるものかということを示している」と結んでいます。