2003年5月3日(土)「しんぶん赤旗」
パート労働者や有期雇用労働者の著しい低賃金・無権利状態を放置できないと、日本共産党はパート労働法を改正する「パート・有期労働者均等待遇法案」を参議院に提出しました。吉川春子参議院議員に法案のポイントなどを聞きました。
──リストラで正社員は減る一方、パートなど不安定雇用労働者が急増していますね。
パート労働法が施行されて十年、現在千二百万人いるパートタイム労働者の七割以上は女性です。パートと通常労働者との格差は拡大するばかりです。通常労働者の一時間あたりの賃金を一〇〇とするとパート労働者の賃金は四九・七で半分以下です。また女性パート労働者の賃金を男性通常労働者と比べると三四・三で三分の一です。
しかも有給休暇、育児介護休業、年金や雇用保険などに未加入で社会保障についても差別されています。景気調整弁として雇われ、企業の都合で「雇い止め」で解雇されてしまいます。
丸子警報器の「臨時」社員が提訴した裁判で、長野地裁上田支部の判決(一九九六年三月)は、「およそ人はその労働にたいし等しく報われなければならないという均等待遇の理念が存在」すると言っています。しかしパート労働者の労働組合加入率は2%台で、裁判で争える労働者はさらに少数です。日本共産党はパートや有期雇用労働者であることによる差別をなくすために「法案」を提案しました。
──法案の中心点はなんですか?
第一に、事業者は賃金、休暇、教育訓練、福利厚生、解雇、退職その他の労働条件について労働者がパート・有期労働者であることを理由として通常の労働者と差別をしてはならないこととしています。
第二に、事業者が通常労働者を募集する場合、まずパート労働者に対して応募の機会を優先的に与える事を求めています。
また育児・介護など家族的責任を負う通常労働者が申し出た場合、一定期間パートタイムで働ける措置をとるように事業主に求めています。
法案が対象にしているのは、パートタイム労働者だけでなく、雇用期間に定めのある有期雇用労働者です。
政府は今国会に有期雇用の期間を延長する労働基準法改悪案を出し不安定な有期雇用を拡大しようとしています。また昨年九月に政府は都道府県あてに高校新規卒業者の就職あっせん先として、有期雇用も対象とする通達を出しています。それだけに有期雇用労働者の均等待遇は緊急な課題です。
──均等待遇を使用者に守らせるために、どんな方法をとるのですか。
第一に、厚生労働大臣はこの法律の均等待遇を実施しない事業主に対して、これを行うように勧告します。それでも従わない場合はその旨を公表できます。勧告・公表しても従わない事業主に対しては是正命令を発することができます。命令に従わなかった事業者には懲役六月以下または三十万円以下の罰金を設けています。
第二は、国は物品購入、公共事業など官公需の契約を締結する際、パート・有期労働者を均等待遇している企業と契約するよう努めるものとしています。
──パート労働法の改正を求める声が高まっていますが、見通しは?
パートや有期雇用労働者の低賃金・無権利な状態を改善するために、均等待遇を義務づける法改正がどうしても必要です。実効ある法改正を求める声も広がっています。
政府も検討してきましたが、法改正にはふれず「指針」を手直しする提言にとどまっています。
昨年四月、日本共産党と民主、自由、社民、無所属議員五十六人で「パート議員連盟」を結成しました。三十回以上議論を重ねて昨年十二月に「パート労働者の均等待遇法案骨子」をまとめましたが、法案提出には至りませんでした。共産党の法案は、罰則以外はパート議連の「骨子」に沿った内容です。私たちは他の野党にも働きかけて法案の実現のために力を尽くします。