日本共産党

2003年5月4日(日)「しんぶん赤旗」

ブッシュ無法戦争 〈最終回〉

米は「勝利者」か

あるべき国際社会めざして


 ブッシュ米大統領はイラクでの「大きな戦闘の終了」を宣言しました。連載「ブッシュ無法戦争」もひとまず終わりにいたします。戦争が終わったからではありません。新たな決意で新たなたたかいへの取り組みを始めるためです。

理由なき戦争

 米英両国はなぜ戦争を始めたのか。ブッシュ政権の本音は、フセイン政権を倒す、しかも武力で倒すことでしたが、国際社会を前に、あげた理由はそうではありませんでした。国連安保理で米国が提起していたのは、フセイン政権が大量破壊兵器をなお所有または開発しているとの疑惑、同政権が9・11同時テロ事件を引き起こしたテロリストとつながりがあるとの疑惑でした。

 ブッシュ演説が浮き彫りにしたのは、疑惑が解明されていないだけでなく、戦争自体が疑惑解明をきわめて困難にしたという事実です。戦争の大義のなさだけでなく、戦争の理由そのものをみずから破壊しているというべきでしょう。

 この連載を私たちは「ブッシュ無法戦争」と名づけました。それは、この戦争が、ブッシュ政権が一部の国の政府と語らい、あらゆる国際的な規範と手続きを無視して、人類が一世紀にわたって築きあげてきた国際社会の秩序というものを破壊しておこなった「無法」な戦争だからです。

 それは、米国民や英国の全体的賛同のもとにおこなわれたものでもありません。「われわれの名前をかたるな」。数百万人の両国市民が戦争反対の行動のなかで掲げつづけたこのことばが、そのことをはっきりと語っています。

明白な「敗北」

 ブッシュ大統領は「テロとの戦争での勝利」と強調し、イラク国民の「解放」「自由」「民主主義」を強調しました。しかし、大統領がそれらの言葉を繰り返しているとき、ほかならぬイラクの現地では、米国の海兵隊員たちが、「米軍は帰ってくれ」と叫ぶイラクの市民、子どもらに向かって発砲していたのです。

 「小学校を占拠するのはやめてほしい」と求める市民に向かって、自動小銃を向ける海兵隊員たちも、自分たちの行動を「勝利」であり「解放」だと思うでしょうか。

 そしてなによりも、銃を向けられたイラクの人々、子どもたちがこれは「解放」だと思うでしょうか。

 イラク戦争報道を米軍の従軍報道、フセイン像の倒壊場面しかみなかった米国国民の多くはたしかにそう受け止めたかもしれません。しかし、イラク戦争の真実を知る世界の人々の大部分は「勝利」などとは思わないでしょう。

 一体、誰にとっての「勝利」なのか。テロ根絶を口実に、自分が悪だと判断する国や政府を武力で倒し、支配下におくことが人々を「解放」することであり、それがあるべき「新しい世界秩序」なのだと決め込んでいる人々にとっての「勝利」ではないのか。

 イラク戦争は、明白な「敗北」の結果として始まりました。逆説ではありません。三月上旬、米英は戦争を国連の名でおこなうための新たな安保理決議の採択を狙っていました。しかし、この企ては破たんしました。それは、戦争ではなく平和的手段で解決すべきだとの声が国連安保理の中で圧倒的多数を占めたからです。米英の戦争の主張は、国連安保理の場、国際政治の舞台で敗北したのです。戦争はこの実情を拒否し、国際社会の秩序を破壊するところから始まったのでした。

無法者の主張

 第二次世界大戦が始まった一九四一年、大西洋上の小島で会談した、アメリカのルーズベルト大統領と英国のチャーチル首相は、第二次大戦後の「世界のよい将来」のための基本原則を打ち出した重要な文書「大西洋憲章」を発表しました。民族の主権の尊重、平和と友好の関係の確立、その内容はその後の国連の設立、戦後の世界秩序のひとつの基礎ともなった歴史的な文書です。

 その六十二年後、両国の現在の指導者は大西洋の島で、その世界秩序をじゅうりんし、国連を無視して戦争をおこなう決定を下したのでした。

 ブッシュ大統領は、一日の演説でルーズベルト大統領の名をあげて、自分のおこなった戦争を合理化しました。歴史の真実を歪める無法者の主張ではないでしょうか。

 五月、私たちは、イラク戦争の「勝利」の本質を明らかにし、人類にとっての本当の「勝利」とあるべき国際社会の姿めざして、新たな連載に取り組みます。(三浦一夫外信部長)


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