2003年5月4日(日)「しんぶん赤旗」
【ロンドン3日西尾正哉】一日に行われた英地方選挙でブレア政権与党の労働党が八百三十三議席を減らす大敗を喫しましたが、その要因はブッシュ米政権のイラク戦争に同調するなど同首相の新労働党(ニューレーバー)路線への厳しい批判です。
英政府は、同国政治史上最大とされた反戦デモや、それに後押しされた百二十人以上の労働党議員の議会での反乱など、世論を無視して戦争を強行しました。しかし戦争後初めての今回の大型選挙で国民の厳しい批判を受けました。
ガーディアン紙三日付は、「地方税の記録的な引き上げおよびイスラム教徒や伝統的な労働党支持者からの“バグダッド・バックラシュ(反動)”の組み合わせ」が敗因と指摘しています。一方、地方選で最高となる30%の得票率で労働党と肩を並べた自由民主党について、「自由民主党は戦争から利益を得た」とのゴードン・ブラウン蔵相のコメントを紹介しています。同党は開戦前までは議会内で唯一戦争反対を主張した党でした。
同紙は「イングランド中部では、反戦派の巻き返しが顕著だった」と指摘しています。
スコットランド議会では、緑の党、スコットランド社会主義党の両党がともに一議席から七、六議席と躍進しました。両党は選挙公約の第一項目にそれぞれ「イラク戦争に反対を続け、非暴力の解決策を探る」「この戦争は米大企業による中東支配のための戦争だ」などと記し、イラク戦争反対を鮮明に打ち出しました。
今回の地方選では、公共サービス切り捨て政策も焦点の一つになりました。
女性医師、ジーン・ターナーさんは、グラスゴーの選挙区で病院の閉鎖反対、医療の充実を訴え、労働党の現職議員を破り当選しました。労働党の医療政策への大きな衝撃として英メディアは注目して報じています。
ターナーさんは、「私の患者の多くは、自分たちが投票した労働党に失望しています。保守党と変わらないと感じています」とニューレーバー路線を批判しました。
投票当日のメーデーでは、演壇に立つ英労働組合会議(TUC)幹部からデモ行進に参加した職場支部代表までが、労働者の権利を削った保守党と何ら変わらないと「ニューレーバー」路線の批判を行いました。
ブレア首相の進めるニューレーバー路線には、労働党の従来の支持者との間に大きなギャップが生じています。「保守党から労働党に変わって期待したが裏切られた」という声は二、三月の反戦デモの中でも聞かれました。
フィナンシャル・タイムズ三日付は、今回の地方選結果は今後の国政に影響を与えるだろうと指摘しています。同紙は、民間資金を投入して政府の管理放棄への道を開く「病院改革」やユーロの導入問題などで、今後国会における多数の労働党議員の「反乱」が見込まれることをあげ、この「二つの問題は、ニューレーバー政権を揺り動かすであろう」と述べています。
一方、35%の得票率だった保守党について、同紙社説は、この得票率は「総選挙での勝利に必要なものより低い。勝利には先例のないほどの国民の支持の動きが必要だ」と指摘しています。
英労働党が、国民の福祉・生活、労働者の権利を守る政策を打ち出し、イラク戦争に賛成した米国追随の政策を変更しない限り、国民の批判はさらに厳しくなりそうです。