2003年5月8日(木)「しんぶん赤旗」
有事法制関連三法案について、与党と民主党との「修正」協議が進んでいます。海外での武力行使に公然と道を開くとともに、米国の先制攻撃の戦争に参戦する危険な本質は、この「修正」で変わるのでしょうか―。
第一に、自衛隊の海外での武力行使に公然と道を開くという問題です。
法案は、「わが国にたいする武力攻撃」に対処することを建前にしています。ところが、政府は、この「わが国」について、日本の領域だけではなく、公海上にいる自衛隊の艦船なども含まれるとしています。
いま、自衛隊を海外に派遣し、米国の戦争を支援する法律には、周辺事態法やテロ対策特別措置法などがあります。政府の説明によると、これらの法律にもとづいて海外に展開する自衛隊の艦船も、有事法制が適用される「わが国」にあたるのです。
有事法案は「わが国」への「武力攻撃事態」、つまり、その「発生」ばかりでなく、それが「予測」されたり、「おそれ」のある事態でも発動されることになっています。与党や民主党の「修正」案も、この点はまったく同じです。
つまり、米軍を支援するために海外に派遣される自衛隊の艦船への攻撃が「予測」されれば、有事法制は動きだす仕組みです。
しかも、政府は、海外にいる自衛隊の艦船が攻撃を受ければ、武力で反撃、応戦すると答弁しています。
周辺事態法(九九年成立)は、日本が攻撃を受けていない「周辺事態」で、武力攻撃を含む軍事行動をおこなっている米軍への自衛隊の支援を定めた法律です。
しかし、海外での武力行使はできず、戦闘がおこなわれるところでは活動できないということを建前としています。そのため、自衛隊の近くで戦闘が予測され、危なくなれば撤退することになっています。
ところが、有事法案は、攻撃が「予測」されれば法律が発動され、その場にふみとどまって米軍への支援をつづけ、攻撃されれば応戦する危険があるのです。
だから、民主党も、昨年の通常国会の論戦では、「周辺事態だけの発生ではできないことが、(有事法制が発動される)武力攻撃事態とあわせて認定されることで、できることはたくさん出てくる」(玄葉光一郎議員、昨年五月七日、衆院有事法制特別委員会)と問題にしてきたのです。
昨年七月には、「有事関連3法案をめぐる問題点〜政府に出し直しを求める理由」と題する見解を発表。「『周辺事態』と『武力攻撃事態』における米軍の行動とわが国の対処との関係が不明確であり、政府の恣意的な判断によってわが国を武力紛争に巻き込む懸念がある」と指摘していたのです。
ところが、今回の「修正」協議では、この周辺事態法との関係の問題については、不問に付されています。
同党は、周辺事態法について「専守防衛を大きく超えて、自衛隊の活動領域に歯止めがかけられない」(九九年四月二十七日、衆院本会議討論)として反対しました。
「周辺事態」と、「武力攻撃事態」との併存によって、活動領域が広がるだけでなく、活動内容も武力攻撃を含むものになるのに、この問題を不問にすることは、同党のこれまでの態度とも矛盾します。
第二に、米国の無法な先制攻撃にも、日本が参戦する道を開くという問題です。
米国の先制攻撃の戦争でも有事法制を発動するのか―。日本共産党の木島日出夫衆院議員の質問に、石破防衛庁長官は「武力攻撃事態、あるいは予測事態に至ったという場合には、この法案が適用される」「前提がそう(米国の先制攻撃)であったから、この法律が発動できないという議論をするつもりはない」と答弁しました。(四月二十四日、衆院有事特委)
つまり、国連憲章に違反するイラク型の先制攻撃の戦争にも有事法制を発動させ、自衛隊が参戦することを認めたのです。
この危険な本質は、「修正」によって変わるものではありません。
民主党は、米国によるイラク戦争について、「国連憲章など国際法に違反する」と反対しましたが、有事法案は、こうしたイラク型の戦争への参戦に道を開くのです。