2003年5月8日(木)「しんぶん赤旗」
【ベルリン6日片岡正明】ウィーンからの報道によると、国際原子力機関(IAEA)はイラクで核施設が略奪され、放射性物質が盗まれたとの情報に対し、IAEAの専門家チームの早急な現地調査を認めるようイラク占領中の米軍当局に要請しました。
米紙ワシントン・ポストやロイター電などによると、イラク戦争前、IAEAの査察団はバグダッド南のザファラニアの核研究施設を調査、封印しました。しかし四月はじめ、同施設からコンピューターや研究機器とともに、濃縮ウランが盗まれました。米軍が封印を破り中に足を踏み入れたといいます。核兵器製造可能な物質はないものの、放射性物質をばらまく「汚い爆弾」の材料となるセシウム、コバルトなども盗まれた可能性があります。
IAEAは核施設の中の詳しい放射性物質リストを保有しており、現地調査をすれば何がなくなっているか指摘できると表明しています。
IAEAのエルバラダイ事務局長はすでに米国政府に対し、査察団が戻るまでの間、「米国が責任をもってすべてのイラクの核施設の安全を確保するよう」要請していました。またエルバラダイ氏は、国連査察団だけがイラクが大量破壊兵器を保有していたかどうかの信頼に足る評価ができるとして、派遣を認めるよう求めていますが、米国はまだ返答していません。