2003年5月10日(土)「しんぶん赤旗」
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日本共産党の木島日出夫議員は九日の衆院有事法制特別委員会で、有事法制関連三法案に対する民主党の対案と修正案について、政府・与党案の問題点をなんら「修正」するものになっていないことを明らかにしながら、前原誠司議員ら同党の提出者に質問しました。
木島氏は、「わが国の領域外でのアメリカの戦争に、わが国を全面的に参戦させる」、「自衛隊の海外での武力行使を認め、国民・民間企業や地方自治体などをそうした戦争に強制的に協力させる」という有事法案の問題点を指摘したうえで、民主党がかつて同じ問題点を指摘していたのではないかとただしました。
木島氏が示したのは、昨年七月十八日に民主党が発表した見解「有事関連三法案をめぐる問題点─政府に出し直しを求める理由」。民主党はこのなかで「米軍との関係についての基本方針が不明確」、「周辺事態と武力攻撃事態における米軍の行動とわが国の対処との関係が不明確であり、政府の恣意(しい)的な判断によってわが国を武力紛争に巻き込む懸念がある」と指摘していました。
木島 ところが民主党の修正案では、民主党が表明してきた政府案のもつ危険な「懸念」を取り除くものにはなっていないのではないか。「懸念」が解消されたという認識なのか。
前原 疑念が払拭(ふっしょく)されたとは考えていない。
民主党自身が指摘していた政府案への「懸念」、木島氏はそれが「国民のみなさんが最大に不安に思っているところ、懸念に思っているところではないか」と指摘。「その懸念が払拭されないまま、これに賛同していくというのはいかがなものか」とただしました。
木島氏は続いて、委員会審議で明らかになった政府案の危険な本質をあげました。
第一は、米国が「先制攻撃戦略」にもとづいて行う戦争にも、有事法制が発動されるという問題です。
四月二十四日の委員会質疑で石破茂防衛庁長官は、そのような場合でも、有事法制は発動され、米軍に対する支援措置をとることが可能になると答弁していました。
木島 民主党は、このようなアメリカ・ブッシュ政権の先制・単独での武力攻撃で始まる戦争によって生み出される「武力攻撃予測事態」の場合でも、武力攻撃事態法が発動できる仕組みになっていると考えるのか。
前原 原因がどうであれ、そういう事態が起きる時、起きた時、あるいは起きそうな時には、この法律を適用することになる。
木島 民主党の基本的立場は、政府と同じだということになる。
木島氏は民主党の岡田克也幹事長がブッシュ政権の「先制攻撃戦略」にもとづくイラク戦争を批判していたことを指摘したうえで、「イラク戦争に反対した立場とそうした戦争を支援する『武力攻撃事態法案』に賛成する立場とはとうてい両立不可能だ」と指摘しました。
第二に木島氏が指摘したのは、武力攻撃事態法案の定義「わが国に対する外部からの武力攻撃」の「わが国」には、わが国領域外にあり、米軍支援のために行動する自衛隊の艦船や航空機も含まれ、それが攻撃されれば、有事法制が発動するという問題です。木島氏は「民主党の修正案には、これに対する歯止めがかけられていない」とのべました。
提出者の平岡秀夫議員は「自衛隊法でも地理的な問題にふれておらず、(この法案でも)法律上の制限を新たに加えていない」と認めました。
第三の問題は「周辺事態」と「武力攻撃予測事態」が併存し、重なり合う問題です。木島氏は「周辺事態法では、武力行使ができなかったのに、まったく同じような状況で重なりあう、同じ局面でありながら、武力攻撃事態法になると、自衛隊の武力行使ができるようになる」「民主党の修正案には、この重大問題に対する言及は何一つなく、民主党の立場は政府原案と同じということだ」と指摘しました。