2003年5月10日(土)「しんぶん赤旗」
【ワシントン8日浜谷浩司】米英両国が作成した対イラク制裁解除決議案は、両国のイラク占領を国際社会に承認させるとともに、占領政策を全面的に支援させる内容となっています。
決議案は、(1)米英によるイラク占領を一年以上として、国連と国際法の名で正当化し(2)石油収入の使途を指示する権限を含め、占領政策をとりしきり(3)占領政策への障害を排除し(4)国際機関と各国に支援を強要するものです。
制裁を一部緩和した一九九六年からの「石油・食料交換計画」で、国連は食料、医薬品など人道物資購入に限定してイラクに認めた原油輸出資金を管理しています。ブッシュ米政権は、この資金と今後の石油収入を占領軍の権限で使えるようにするため、安保理に対イラク制裁解除を迫っています。どうせ安保理に持ち込むなら取れるだけ取ってやれ、というのが決議案の中身です。
湾岸戦争の停戦条件として対イラク経済制裁を決めた一九九一年の安保理決議六八七は、制裁解除には、国連査察官が大量破壊兵器の廃棄を確認することが必要だと規定しています。ところが今回の決議案は、大量破壊兵器査察については何も述べていません。
イラク戦争は、国連憲章第七章が禁止している「平和の破壊」「侵略行為」そのものです。それにもかかわらず決議案は、占領政策を国連憲章の名で正当化するとしています。決議案は、どこからみても米政権の「無法者」ぶりを改めて鮮明にしています。
求められているのは、イラク戦争という違法行為によって、無理やりつくり出された占領支配の不正常な事態を一刻も早く国際法の枠組みに戻し、イラク国民の意思にそって正常化させることです。その役割を担う主体は国連しかありません。
イラク戦争の開始前と同様に、あるいはそれ以上に国際社会は、米国による無法を許すのかどうかを問われています。