2003年5月10日(土)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 新型肺炎やO157への対応などで重要な保健所が、各地で減らされているのはなぜですか。(千葉・一読者)
〈答え〉 各地の保健所は、新型肺炎(SARS=サーズ)などの感染防止や発生時の対応、病原性大腸菌 O157などを防止する食品検査や立ち入り調査などで重要性を増しています。しかし全国の保健所は、一九九三年度の八百四十八カ所から今年度は五百七十六カ所に減っています。
いまの削減は、一九九四年の保健所法の全面改悪で始まったものです。このとき、法の名称も「地域保健法」と変わりました。具体的には第五条で、都道府県の保健所は医療法の「二次医療圏」などを参考に所管区域を設定するとしました。当時の保健所区域より広い「二次医療圏」などにあわせ、広域化して統廃合を進めさせるものです。
改悪前、都道府県の保健所は六百三十一カ所でしたが「二次医療圏」は三百四十二カ所で、無理やりこれにあわせれば半減近い削減となります。政令指定都市・中核市などや特別区の保健所も、厚労省告示で「都道府県の設置する保健所との均衡」を「勘案」するとされました。
保健所は、憲法二五条が国に義務づけた「公衆衛生の向上及び増進」を担う機関とされ、設置・運営費に国が補助しています。これを削減するのが法改悪のねらいで、自治体は財政的裏づけもなく保健所業務の一部を肩代わりさせられました。保健所にも新業務が追加され、少ない人員で広い地域を担当し、住民密着の業務は困難になっています。この改悪に日本共産党は反対しましたが、スピード審議で強行可決されました。
保健所の統廃合には自治体・住民の反対が強く、市長に「現行体制維持」と答弁させた横浜市など、運動で存続をかちとった地域もあります。経済の地球規模化などで新種の病原体との遭遇機会も増えているいま、保健所は増設・強化こそが必要で、各地で地域保健法見直しの声が高まっています。
(清)
〔2003・5・10(土)〕