日本共産党

2003年5月11日(日)「しんぶん赤旗」

有事法制

「修正」でも変わらない これだけの危険

衆院有事特審議でいっそう明らかに

きっぱり廃案を


 有事法制関連三法案について自民、公明など与党は、おそくとも十五日の衆院通過をねらい、民主党との「修正」協議を週明け早々の十二日にも決着させようとしています。しかし、九日の衆院有事法制特別委員会での審議では、「修正」によっても有事法案の危険性は変わらず、廃案以外に道がないことがいっそう明らかになりました。


海外での武力行使に歯止めなし

 九日の有事特別委−。

 筒井信隆議員(民主党) ペルシャ湾とかインド洋とか、もっと遠いところでも、組織的・計画的な、わが自衛隊にたいする武力攻撃があった場合には、(有事法制が発動される)「武力攻撃事態」の認定がありうる。こういう法制度になっていますね。

 福田康夫官房長官 そういう状況が整った場合、「武力攻撃事態」という認定はありうる。

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 有事法案は、「わが国に対する外部からの武力攻撃」への対処を建前としています。

 政府は、この「わが国」とは、海外に展開する自衛隊艦船なども含まれるとし、組織的・計画的な攻撃を受けた場合には、自衛権を行使して、武力で反撃、応戦するとしてきました。福田長官はこのことをあらためて認めたのです。

 さらに、石破茂防衛庁長官は、ペルシャ湾やインド洋にいる自衛隊が攻撃を受け、それが日本の国土への武力攻撃に発展しない場合も、「(『武力攻撃事態』に認定しないと)断定するのがきわめて難しい」とのべ、否定しませんでした。

 しかも、福田長官は、こうした場合に、「米国がわが国の同意や要請にもとづいて、集団的自衛権を行使して、当該武力攻撃を排除するために必要な行動をとる」とのべ、日米共同の武力反撃も可能との考えを示しました。

 そうなると、自衛隊が出動するところならどこでも「わが国」となり、海外での武力行使が可能になり、米軍との共同作戦もできるようになるのです。

 民主党の「修正」案も同じです。九日の有事特別委で日本共産党の木島日出夫議員の質問に、「修正」案提出者の平岡秀夫議員は、この問題について「法律上の制限を新たに加えていない」と認めました。

 民主党は、今回の「修正」案の提出(四月三十日)にあたって、「仮に我が国領域から遠く離れた場所(例えば地球の裏側)において攻撃が発生した場合、これを武力攻撃事態(武力攻撃予測事態)と認定することは、我が国の国是である専守防衛の観点から問題が生じかねない」と指摘。「政府はどのような歯止め策を考慮しているか」を審議で確認するとしていました。

 しかし、筒井議員の質問で、逆に、海外での武力行使への歯止めがないことが露呈したのです。

「周辺事態」逃げずに応戦

 石破茂防衛庁長官 周辺事態法をつくるときも、そういう(攻撃を受ける)ことが起こらないように細心の配慮をしてつくっている。にもかかわらず、そういうことが仮に起こり、自衛権行使の三要件にあてはまる場合に、(自衛権を発動する)可能性は排除されない。

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有事法制反対をアピールする人たち=7日、大阪市北区

 周辺事態法(一九九九年成立)では、日本が攻撃を受けていない「周辺事態」で、戦闘行動を展開する米軍を自衛隊が海外にまで出ていって支援することができます。

 ところが、同法では、「武力行使はしない」「戦闘地域にはいかない」というのが建前でした。このため、海外に出かけ、米軍を支援する自衛隊の近くで戦闘が予測され、危険になれば、その場から撤退することになっています。

 このとき、有事法制があればどうなるか。

 米軍への支援のために海外に出かけている自衛隊への攻撃が「予測」されたり、「おそれ」のある事態、つまり、「武力攻撃事態」になれば、有事法制が発動されることになるのです。

 そうなると、自衛隊はその場に踏みとどまって米軍への支援をつづけ、攻撃を受ければ武力で反撃、応戦することになります。

 冒頭の石破長官の答弁はこのことを認めるものでした。

 ◇

 この問題について民主党は昨年七月の見解で「『周辺事態』と『武力攻撃事態』における米軍の行動とわが国の対処との関係が不明確であり、政府の恣意(しい)的な判断によってわが国を武力紛争に巻き込む懸念がある」(「有事関連3法案をめぐる問題点〜政府に出し直しを求める理由」)と指摘していました。

 民主党の「修正」案提出者の前原誠司議員も九日の有事特別委で、木島議員の質問にたいし、「(この)疑念が払しょくされたとは考えていない」と答弁しました。

 ところが、与党と民主党の「修正」協議では、この問題にたいする言及はありません。

イラク型先制攻撃にも参戦

 木島日出夫議員(日本共産党) アメリカが(先制的に)武力攻撃を発動して戦争が始まった。相手国が日本も攻撃するぞという意思が表明された。そのとき法律は動くのか。

 石破茂防衛庁長官 武力攻撃事態、あるいは予測事態にいたった場合には、この法案が適用される。前提がそう(米国の先制攻撃)であったからこの法律が発動できないという議論をするつもりはない。

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 四月二十四日の有事特別委で、石破長官は木島議員の質問にたいし、米国がアジア太平洋地域でイラク戦争型の先制攻撃をおこなったときでも有事法制が発動され、米軍にたいする支援が可能になることを認めました。

 九日の有事特別委では、前原議員も、木島議員の質問にたいし「原因がどうであれ、そういう事態が起きるとき、起きたとき、あるいは起きそうなときには、この法律を適用する」「同盟関係を結んでいるアメリカが起こしたことによって、それが飛び火する可能性は理屈のうえではありうる」と認めました。

 一方で、前原議員は「(米国の先制攻撃戦略は)国際法的に認められているものだとは認識していない」と指摘。「アメリカ(へ)の支援・協力について条文通りおこなうかどうかは、政策的判断にゆだねられる」と述べました。

 しかし、「それを発動するかどうか(の政策判断をするの)は時の政権であり、立法者ではありません」(木島議員)。イラク戦争型先制攻撃への参戦は、法律の仕組みとして歯止めがないことがいっそう明らかになったのです。


航空、民放…指定公共機関に

政府、強制動員発言つぎつぎ

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 有事法案で民間企業・機関を「指定公共機関」に指定し、戦争協力に強制動員することについて、労働者から「内心の自由など基本的人権を根こそぎ奪うもの」と懸念が高まっています。

 民放各社で構成する日本民間放送連盟は、報道の自由が奪われることに「強い懸念」を表明しています。

 しかし、政府は、こうした懸念を無視して、強制動員を当然視する答弁を繰り返しています。

 福田康夫官房長官は、九日の有事特別委で、「指定公共機関」から民放を除外することについて、「武力攻撃事態では緊急情報の正確・迅速な提供が重要。民間放送事業者のみを除外することは適当ではない」と答弁しました。

 また、安倍晋三官房副長官は九日の衆院外務委員会で、「民間航空事業者の(指定公共機関への)指定について検討していきたい」と答弁。

 さらに戦争協力を拒否した従業員に対する会社側の処分も「従業員が個人的な考えで業務を拒否した場合には、その法人内の内規での問題になる」として、「(憲法に)反するとは考えていない」と当然視しています。


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