2003年5月11日(日)「しんぶん赤旗」
【ワシントン9日遠藤誠二】国連安保理は九日、イラクを軍事侵攻した米英両国とスペインが提示した、イラクへの経済制裁を解除し、米英が同国での占領を続ける内容の決議案の協議に入りました。初日の討議では決議案への質問が相次ぎ、本格的な論議は来週以降となります。
九日午前、安保理非公開会合後に記者会見したネグロポンテ米国連大使は、安保理事国から「いくつか質問が出された」と発言。週明けの十二日に専門家を招いた非公式協議、十四日に大使級の安保理会合を再び開くことを明らかにしました。
決議案提示を受け、ロシアのラブロフ国連大使は「多くの質問がある」と述べ、フェドトフ外務次官はいくらか前向きの要素があるとしながらも、「はっきりさせなければならない多くの問題がある」と語りました。
ドラサブリエール仏国連大使は、「前向きな要素がある」が「国連特別調整官の役割を高める必要がある」とし、国連の役割強化を求める意向を表明しました。
プロイガー独国連大使は「将来をみすえるという空気がある」としつつ、「制裁解除や復興の進め方に多くの疑義がある」と述べました。
チリとアンゴラの両理事国は決議案に前向きな姿勢を示しました。
議長国パキスタンのアクラム大使は、「決議案は包括的で複雑なので、よく吟味する必要がある」と述べるにとどまりました。
米英による決議案は、イラク「石油・食料交換計画」を四カ月で廃止し、イラクにたいする経済制裁解除をよびかけるとともに、米英両国軍が一年以上占領軍としてイラクに居座るものです。
国連、国際通貨基金、世界銀行など国際的な諮問機関が監督する「イラク支援基金」を設立し、人道支援と復興を進めるとしていますが、石油の販売などの運営は米英の指示に基づくもので、国連の役割を後方に追いやっています。また、国連による大量破壊兵器の査察再開に関しては一切触れていません。