2003年5月11日(日)「しんぶん赤旗」
|
いま、平和とメディアを考えよう−−日本ジャーナリスト会議(東京・千代田区)は十日、東京・霞が関で「テロ・イラク・有事法制と言論表現の自由」をテーマにシンポジウムを開き、学生や市民、四百人が集いました。
集会呼びかけ人の原寿雄さん(元共同通信社編集主幹)は、十六年前の朝日新聞阪神支局襲撃事件にも触れ、現在のジャーナリズムが、「市民派」と国家や愛国心を強調する「国家・国民派」の流れのどちらを選ぶべきかが問われていると問題を提起。
ニュースキャスターの筑紫哲也さんが「ジャーナリストの覚悟」と題して講演、イラク戦争報道について「メディアが(戦争)プロパガンダの一部になってしまっていた」と批判し、メディアが「権力を監視する役割」に立ち返ることを強調しました。
シンポジウムでは反戦漫画『戦争中毒』を監訳した、きくちゆみさん、東京大学社会情報研究所の姜尚中(かん・さんじゅん)教授(政治学)、一橋大学の渡辺治教授(政治学)、上智大学新聞学科の田島泰彦教授(憲法・メディア法)が発言し参加者の質問にもこたえました。
きくちさんは、アメリカのメディアを「ミサイルが落ちた下で何が起きているのかの報道がまったくなかった」と批判。インターネットから自ら入手した、被害を受けた市民の生々しい写真をスクリーンに映し出しました。
渡辺さんはイラク戦争の背景に、アメリカのグローバル企業の「自分の国と同じように活動する秩序づくりがある」と説明。姜さんは北朝鮮の拉致問題に触れ、日本と北朝鮮の間に「国交がないことが脅威」だと強調。国交を結びながら真相解明に努力すべきだと発言しました。
友人と参加した津端智也さん(20)は「イラク戦争がなぜ起こったのか原因が知りたい。日本のメディアはアメリカ側に立っている」。
反戦運動に取り組んできた横浜市の吉田尚樹さん(40)は「メディアがつくった誤った世論を、市民運動でひっくり返すのは容易じゃない。メディアは真実を報道してほしい」と話していました。