日本共産党

2003年5月12日(月)「しんぶん赤旗」

問われるジャーナリズム

「どうなる」の姿勢から 「どうする」への提言も


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 イラク戦争をめぐる報道を契機に日本のジャーナリズムのあり方が改めて問われています。その状況を受けて新聞、テレビを中心とするマスメディアの現実に目を向け、その問題点にメスを入れ、ジャーナリズム本来のあり方をさぐる著作が相次いでいます。

JCJがブックレット

 JCJ(日本ジャーナリスト会議)の有事法廃案をめざす実行委員会などは、米英によるイラクへの武力攻撃強行という事態のなかで二点のブックレットを緊急出版しました。

 桂敬一著『戦争か平和か―市民とメディアがその行方を決める』(頒価五〇〇円)は、イラク問題をめぐって緊迫するなか、JCJが開いた「緊急情勢検討・行動計画会議」(二月)で著者が行った問題提起をもとに書き下したものです。同書でとくに強調され、説得力があるのは、「『どうなるか』でなく『どうするか』のジャーナリズムを」という提言です。著者は、日本には「報じるものが、自分の立場は空白にしたまま、なりゆきを予想するだけの『どうなる』ジャーナリズム」しかなく、「自分を含めていかにあるべきか、なにをなすべきかを考え、またそれを受け手にも考えてもらおうとする、『どうする』ジャーナリズムがまるでない」と指摘、「思い切ってジャーナリズムのあり方を外に向けて広げよう」と提唱しています。

 もう一つは、自由メディア出版プロジェクト編『ジャーナリズム再生への道筋―「グローバリズム」時代とマスメディア』(頒価五〇〇円)です。昨年開かれた「自由メディア・トークの会」の記録を中心にしたもの。前半は、門奈直樹氏による「アフガン戦争とマスメディア―英国BBC放送の新たな挑戦」と題した問題提起で、真の意味の「公正・公平」に立つその報道姿勢が紹介され、それと対照的に同盟国側からの垂れ流しに終始する日本のメディアの戦争・国際報道の実態を浮き彫りにしています。後半では、この提起をうけた小池振一郎氏の司会による参加者の討論が紹介されています。

 これらは、「九・一一」テロ、米英の圧倒的な軍事力による武力攻撃という歴史の分岐点に直面し、日本のメディアの報道姿勢、ジャーナリズムのあり方を真正面から検証、転換の方向を鋭く示している点でタイムリーな著作です。

新聞のあるべき姿は

 二つのブックレットがあぶり出している日本のジャーナリズムの体質と構造の背景の一端を、新聞にしぼって概観しているのが、中馬清福著『新聞は生き残れるか』(岩波新書・七〇〇円)です。「朝日」政治部記者出身で同社代表取締役専務・編集担当をつとめた著者が、体験を踏まえながら、あくまで一ジャーナリストの視点で新聞の現状を憂い、そのあるべき姿について見解を明らかにしています。

 武田徹著『戦争報道』(ちくま新書・七二〇円)は、第二次世界大戦いらいべトナム戦争、湾岸戦争、そして今回のイラク戦争も視野に入れて、戦争と報道の歴史、その役割を見つめている点で参考になります。

 そのほかノーム・チョムスキー著、鈴木主税訳『メディア・コントロール』(集英社新書・六六〇円)も注目される著作です。

 金光奎・ジャーナリスト


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