2003年5月13日(火)「しんぶん赤旗」
与党が十二日、民主党に示した有事法案の「修正」提案は、法案の危険な本質を変えずに、わずかばかりの字句修正をはかっただけのもので、「修正」協議の実態を映し出すものになっています。
有事法案の危険な本質は、「日本が攻められたときの備え」ではなく、「攻めるときの備え」だということです。
現に、国会審議では、米国が海外でおこす先制攻撃の戦争に自衛隊が武力行使をもって参戦し、その無法な戦争に国民を強制動員できる仕組みが明らかになっています。
民主党自身が昨年、政府の恣意(しい)的判断で、米国の武力紛争に日本が巻き込まれるのではないかという懸念を表明していましたが、「修正」協議では、この問題は対象になっていません。
民主党の岡田克也幹事長は十一日のNHK討論で、「われわれが問題にしている一つの点だ。国会の中できちんとした担保がとれればいい」「審議のなかでただしていく」とのべています。
実際、同党議員が九日の衆院有事法制特別委員会でこの問題をとりあげました。ところが、政府は、米軍支援のために海外に展開している自衛隊が攻撃されれば、有事法制を発動し、武力で反撃、応戦することをあらためて認めたのです。「担保」どころか、法案の危険性がいっそう浮き彫りになりましたが、「修正」協議にはまったく反映されていません。
国民の強制動員の問題で、民主党が主張しているのは、武力攻撃事態法案の「修正」で、「基本的人権の保障」を具体的に書き込むということです。
しかし、法案はもともと、基本的人権について「制限が加えられる」と明記し、国民の自由と権利を制限するという法体系になっています。
民主党の「修正」案も「(基本的人権を)制約することが余儀なくされるに至った場合」と明記し、制限自体を否定しているわけではありません。
だから、与党の「修正」提案は、対処基本方針に事態認定の「前提事実」なるものを盛り込むことや、「報道・表現の自由を侵すようなことがあってはならない」との付帯決議をあげるといったものばかり。いずれも、法案の危険な構造を前提にしたものです。
それどころか、民主党が求めている武力攻撃事態法案に「基本的人権の保障」を具体的に書き込む問題でも、与党から「修正しない」と拒否されるありさまです。