2003年5月14日(水)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 いま国会で審議されている、生物多様性条約のカルタヘナ議定書や、その国内担保法案とは、どういうものですか。(東京・一読者)
〈答え〉 いま遺伝子組み換えなどによる新形質の生物が、生態系の破壊・かく乱や、花粉などによる在来種の遺伝子汚染といった問題を起こし、生物多様性条約がめざす「生物の多様性の保全」「持続的な利用」を脅かしています。
「カルタヘナ議定書」は、これらの生物の「国境を越える移動」を規制し、多様性保全を図る条約です。対象は▽DNA組み換えなどの核酸技術▽分類学上の「科」をこえる細胞融合技術-でつくられる「改変された生物」(LMO)です。そのために▽情報共有などの国際機関バイオセイフティ・クリアリング・ハウス(BCH)を設置し利用情報の通報を義務づける▽LMO輸出入の事前通告・同意原則やリスク評価・リスク管理の規定-などを定めています。
国会には、この議定書の批准案件とともに、国内実施法となる「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律案」も提出されています。法案は▽環境省など六省の大臣が基本的事項を公表▽環境拡散を“防止しない”で遺伝子組み換え生物などを使用する場合、影響評価書を添えて申請し、大臣の承認をうける-などを規定しています。
議定書の批准は当然ですが、日本で問題なのは、大規模に遺伝子組み換え作物を生産する米国から、食料の多くを輸入していることです。米国はバイオ企業の「知的所有権」などを理由に、生物多様性条約の批准も拒否しています。
政府は二〇〇〇年の遺伝子組み換えトウモロコシ「スターリンク」侵入事件でも、輸出していないとの米側の主張を理由に米当局が動くまで独自調査も渋った“実績”があります。政府が環境拡散を“防止しない”生物利用も承認することなどには強い不安があり、影響評価の基礎資料なども含めた情報公開の徹底が必要です。
(博)
〔2003・5・14(水)〕