2003年5月15日(木)「しんぶん赤旗」
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衆院有事法制特別委員会は十四日、与党三党と民主党が共同で「修正」した武力攻撃事態法案、自衛隊法改悪案、安全保障会議設置法改悪案の有事三法案を自民、公明、保守新の与党三党と民主、自由両党の賛成多数で可決しました。日本共産党、社民党は反対しました。与党三党と民主党は、十五日の本会議で採決し、参院に送付する構えです。
日本共産党の赤嶺政賢議員が反対討論に立ち、小泉純一郎首相出席の同日の締めくくり総括質疑で、木島日出夫議員が有事法案の憲法違反の本質を追及しました。
同日、国会周辺では、労組や市民団体、女性グループや宗教者などが、廃案をめざして座り込みや国会要請行動を行いました。日本共産党は有事法制廃案をめざして十一日から全国いっせい行動にとりくみ、十四日までに駅頭での訴えなどを約六千五百カ所で行っています。
有事法案の衆院特別委員会での採決をめぐって緊迫した十四日、国会周辺は朝から廃案を求める人々の抗議の声に包まれました。同日夜は、国会近くの日比谷野外音楽堂で「STOP有事法制5・14緊急集会」が開かれ、まともな審議もないまま採決を強行した自民、公明など与党と野党の民主、自由の両党に怒りのこぶしを突き上げました。
緊急集会は「有事法制は許さない!運動推進連絡センター」が呼びかけたもので全国から五千人が参加しました。
「これまで二回も国会で阻止した経験を思い起こし、廃案へ全力あげる」=東京・谷田啓二さん(62)=、「危険な内容を知らせ、草の根、地方から運動を広げ、国民はこんなに怒っているんだと見せつけたい」=栃木・鹿沼市の露久保美栄子さん(29)=など廃案への決意が聞かれました。
主催者あいさつに立った全労連の熊谷金道議長は、「労働者、国民のなかに法案の危険性を広げ、廃案めざして、粘り強くたたかう」と決意を表明しました。
日本共産党の市田忠義書記局長が国会情勢報告と決意表明に立ち、特別委員会での採決強行を糾弾し「廃案に追い込むためにお互いに力を尽くそう」と呼びかけました。
日弁連や航空労組連絡会、全国革新懇の代表があいさつし、各界から決意が表明されました。高校三年生の佐藤知弘さんは、高校生平和大集会にふれ、「夢や人生を戦争で奪われたくありません。…戦争に反対するすべての人の胸にたぎる平和への思いを一つにつなぎ、手を取り合い学びながら、戦争のない社会を築いていきたい」とのべ、共感の拍手に包まれました。
集会には日本共産党の上田耕一郎副委員長や多数の国会議員が参加しました。
集会後、国会までデモ行進しました。
日本弁護士連合会の本林徹会長は十四日、衆院有事法制特別委員会で可決された有事法案について「なお憲法上多くの重大な問題点が存在し、当連合会が指摘してきた基本的人権を侵害する危険性は解消されていない」とし、成立に反対する声明を発表しました。
日本弁護士連合会の本林徹会長が十四日発表した有事法案の「修正採択」についての声明は、「修正案」でも残る問題として、以下のような内容を指摘しています。該当部分を紹介します。
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肝心な「武力攻撃予測事態」の定義や範囲は曖昧(あいまい)なままであり、「予測事態」と周辺事態法でいう「周辺事態」の異同や、武力攻撃事態対処法と周辺事態法がどう連動するのかは依然として不明確である。また、有事認定の客観性も十分に担保されていない。さらに、国会による事前の民主的コントロールも確保されていない。有事における首相の地方公共団体や指定公共機関に対する指示権・代執行権は、当面凍結されたものの何ら変更がなく、有事において民主的な統治機構や地方自治を維持することができるのかという疑問は払拭(しょく)されていない。民放を含むメディアが有事に政府の統制下に置かれる危険性も完全には排除されていない。
したがって、修正案にはなお憲法上多くの重大な問題点が存在し、当連合会が指摘してきた基本的人権を侵害する危険性は解消されていない。
しかも、今回の修正は国民的な議論を尽くしたものとは言いがたく、特別委員会における国民に開かれた議論や審議すら行われていない。
言うまでもなく、有事法制法案は、わが国の進路を決定し、国民の生命と安全そして基本的人権に大きく関わる重要法案である。
当連合会は、このような憲法原理にかかわる重要法案について、十分な国民的議論も国会審議もないままに、なお多くの問題点が存する修正案が、与党と民主党の合意ができたということによって、そのまま直ちに可決され成立することには反対せざるをえない。
当連合会は、今後の衆議院本会議及び参議院において徹底的な審議を行い、「有事」の定義や認定手続きを含む修正案の基本構造上の問題点を明らかにしたうえで、修正案を一度国民的議論に供し、議論を尽くして出し直すことを、強く求めるものである。