2003年5月15日(木)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 防衛庁が自衛官適齢者の情報を自治体に提供させていたことが問題になっていますが、どうしてこんなことがおこるのですか。(愛知・一読者)
〈答え〉 防衛庁が自衛官募集などのためとして、自治体に適齢者の情報を住民基本台帳から提供させていたことが、四月に明らかになりました。これまでのまとめでは、情報提供した市町村は八百を超えます。防衛庁は一九六六年ごろから情報提供を要請したもようです。政府は都道府県知事や市町村長が「自衛官の募集に関する事務の一部を行う」とする自衛隊法九七条や、同施行令による法定委託事務として、自治体に“依頼”したと説明しています。
住民基本台帳法には、住所・氏名・生年月日・性別の四情報の「閲覧」を請求できるとの規定はありますが、一定年齢以上の個人情報を一律に「提供」させる行為は「閲覧」とはいえません。防衛庁は住基法が認めていない行為を自治体に要請したことになります。しかも自衛隊地方連絡部の要求などを背景に四百を超える自治体が、四情報以外の健康状態や家族実態などの情報まで提供していました。
また一九八八年制定の「行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律」でも、行政機関が個人情報ファイルを保有するときは総務大臣への通知が義務づけられているのに、適齢者名簿は通知されませんでした。政府は当初通知義務がない「採用試験に関する個人情報」だからと説明していましたが、その後、電算処理情報でなく「文書」だから通知義務はないとするなど、無責任な対応に終始しています。
さらに防衛庁は、応募者の情報を警察に渡し、調査を依頼していました。自衛官募集への警察の「協力」も定めた自衛隊法九七条を根拠にしています。
これらのことは、昨年の情報公開請求者リスト事件と同様、防衛庁らの根強い人権軽視の体質を浮き彫りにするものです。また自衛隊法が国民の権利と鋭く対立していることも改めて鮮明にしています。
(水)
〔2003・5・15(木)〕