2003年5月15日(木)「しんぶん赤旗」
【ワシントン13日遠藤誠二】サウジアラビアの首都リヤドで十二日に発生、死者三十四人、負傷者百数十人に達したテロ事件は、ブッシュ米政権内に衝撃を与えています(米国人の死者七人、負傷者三十九人)。ブッシュ大統領は十三日、「テロ戦争が継続していることを思いおこさせるものだ」と言明しました。同時に、政権がイラク戦争にばかりに焦点をあててきたと批判する意見もあがっています。
十三日午前、遊説先のインディアナ州インディアナポリスを訪れたブッシュ大統領は、「この卑劣な行動は、信念が憎悪という殺人者の仕業だ」「米国は殺人者を見つける。そして彼らは米国の正義の意味を習うだろう」とのべ、犯人捜索に全力をあげることを主張。チェイニー副大統領は、「最終的に、この脅威に対処する方策は、それを壊滅させることのみだ」と語り、テロリストを根絶やしにすること以外にテロ撲滅はできないとの考えを改めて示しました。
今回の事件発生前の五月一日、国務省はサウジ渡航の警告を出していました。
加えて狙われた外国人用住居は、警備も厳重だったことから、米政府関係者はテロ発生を重く受け止めています。
米国内ではテロを糾弾する声が圧倒的です。
そのなかで、民主党のグラハム上院議員は十三日、「米国にとっての最優先課題は、テロ戦争に勝利することで、中東や中央アジアでの悪とたたかう前にやるべきことだった」「イラク戦争は、テロ戦争から注意をそらすことになった」とブッシュ政権のとった方針が誤りだったと主張しました。
通信社報道によると、前米情報機関当局者は、「イラクへの侵攻が、アラブ過激派の怒りの度合いを高くさせた」とコメントしています。
サウジアラビアの爆弾テロ事件は、リヤド市内の東部にある米国人などが住む外国人居住地区で起きました。米国人を含む外国民間人を狙ったのは明らかです。いかなる理由があるにせよ、民間人を標的にした無差別殺りくは、絶対に正当化されない卑劣なテロにほかなりません。
具体的にどのような組織の犯行であるかのはまだわかりませんが、治安当局による厳正な対処が求められています。
サウジアラビア当局は自爆テロを厳しく非難する一方で、テロの発生する不安を隠していません。とくに、今回の事件の背景には、米英によるイラク戦争がおこなわれ、さらに占領がつづいていることにたいするアラブ諸国、とくにサウジアラビア国民の激しい怒りがあるといえます。
イスラム教の聖地であるメッカやメディナのあるサウジでは、一九九〇年の湾岸危機以来続く、米軍の駐留に対して、国民が不満を強めてきました。こうした不満は、米国の同時多発テロの首謀者であるウサマ・ビンラディンなど、多くのテロリストを生み出す土壌となってきました。
九五年にはリヤド郊外に駐留する米軍顧問団にたいするテロが発生。九六年のダーランの米空軍基地施設では、米国民十九人が死亡、四百人が負傷するという大テロがおこなわれました。
これに加え、イスラエル・パレスチナ紛争で、米国が、長年イスラエルを支援してきたことも、解決を遅らせるものとして、国民の反発を買ってきました。
イラク戦争後に米政府はサウジ駐留の撤退、カタールへの移転を発表しました。しかし、カタールへの駐留に加え、隣国イラクにさらに大量な部隊が占領軍として長期駐留することになり、地域全体での米軍の存在はかえって増大しています。
サウジアラビア市民の間では、イラク戦争の開始とともに、反戦反米の気運は急速に高まりました。その一方で、長い間親米政策をつづけてきた政府にたいする不満もますます強まっていました。
テロ根絶といいながら一方的に戦争をおこない、政権転覆まで合理化するブッシュ政権のやりくちは、テロ問題を解決しないばかりか、かえって事態を悪化させかねないことを今回のテロは物語っています。
(アンマンで岡崎衆史)