日本共産党

2003年5月16日(金)「しんぶん赤旗」

有事法制 危険、矛盾消えない

“翼賛”で衆院ゴリ押ししても


 有事法制三法案は十五日、自民、公明、保守新の与党三党と民主、自由両党の賛成で衆院を通過しました。九割の賛成=“有事翼賛”ともいうべき圧倒的多数を誇っても、有事法案のもつ危険と推進勢力の矛盾は消せません。有事法案の廃案をめざすたたかいの舞台は、参院に移ります。


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抗議のデモ
抗議のデモ行進をする有事法制に反対する岩手県連絡会の人たち=15日、盛岡市

「国民守るため」というが…

「攻めるときの備え」は明白

 「国民の安全、国家の平和と独立を図っていくためのものだ」。十四日の衆院有事法制特別委員会で、小泉首相は有事法案についてこう繰り返しました。

 しかし、「有事に国民を守るというより、海外に攻めていく法律」(琉球新報七日付社説)であることは、衆院での審議を通じていっそう明らかになりました。

 首相は「公海上にあるわが国の艦船にたいする組織的、計画的な武力行使はわが国にたいする武力攻撃に該当しうる」(十四日、有事特別委)とのべました。この見解自体は、従来からの政府の一貫した答弁です。

 しかし、自衛隊に武力行使を認める有事法制の発動要件となると質的に異なった意味をもちます。周辺事態法やテロ特別措置法では、「戦闘行為と一線を画する」地域でしか行動せず、戦闘行為が発生すれば行動を中断し、撤退するのが建前でした。ところが、「武力攻撃予測事態」となれば有事法制が発動し、自衛隊艦船はその場に踏みとどまり、米軍を支援することも可能です。さらに攻撃を受けて「武力攻撃事態」と認定されれば、応戦することもできることになるのです。「わが国」には地理的制限もありません。

 しかも、政府はイラク戦争型の先制攻撃の戦争であっても、有事法制が発動することを認めています。まさに米軍の先制攻撃型の戦争に武力行使をもって参戦する―「攻めるための法律」という危険な本質は明らかです。この本質を隠して「国民の安全」を掲げざるを得ないところに、有事法案推進勢力の矛盾があります。

「人権を保障する」というが…

「自由・権利制限」解消せず

 与党や民主党などは「修正」によって、「基本的人権に関する規定は、最大限尊重」と明記したことで「基本的人権を保障した」(提案理由説明)などとのべています。

 しかし、「国民の自由と権利…に制限が加えられる」という有事法案の規定にはなんら変更が加えられていません。憲法が保障する基本的人権を包括的に制限する本質は変わらないのです。

 もともと有事法案は、米軍支援の際に自治体や民間企業などを強制動員できないという周辺事態法の「制約」を突破するために狙われたものでした。

 そのため、有事法案では国民の「自由と権利」を制限するとともに、自治体や指定公共機関に戦争協力の「責務」を明記しました。国民も戦争協力に「努める」ことがうたわれています。

 戦争反対の集会や報道についても「公共の福祉に反しない限り」(福田官房長官)という答弁も変更されていません。有事法制が発動されたら、文字どおり「戦争反対は利敵行為」(公明・冬柴幹事長)として国民が罰せられる事態にもなるのです。

 「基本的人権は最大限尊重する」と明記したところで、人権制限・侵害の危険を解消することはできません。

民主の“譲れない主張”どこに

“歯止め”ないまま賛成

 有事法案の危険な本質が次々明らかになるもとで、民主党は与党との「修正」合意を「結果もプロセスも画期的」(菅直人代表)と評価。自由党も「われわれの主張がかなり取り入れられた」(小沢一郎党首)として、与党三党とともに賛成しました。両党の姿勢は、みずから主張してきた内容とも矛盾するものです。

 民主党は、「修正」案の提出(四月三十日)にあたって、「仮にわが国領域から遠く離れた場所(例えば地球の裏側)において攻撃が発生した場合、これを(有事法制が発動する)武力攻撃事態(武力攻撃予測事態)と認定することは、わが国の国是である専守防衛の観点から問題が生じかねない」として、政府に“歯止め策”を確認していました。

 ところが、政府は、海外での武力行使への歯止めがないことを認める答弁をしたのです。これには、質問した同党議員も「専守防衛の原則に真っ向から反する」と指摘せざるをえませんでした。

 また民主党は、昨年七月の見解で、「『周辺事態』と『武力攻撃事態』における米軍の行動とわが国の対処との関係が不明確」とし、政府の恣意(しい)的な判断によって「わが国を武力紛争に巻き込む懸念」を指摘。イラク戦争には「国連憲章など国際法に反する」と反対しました。

 しかし、「修正」してもイラク戦争のような米国の無法な先制攻撃に日本が参戦する道を開く有事法案の本質は何ら変わるものではありません。


密室「修正」に厳しい目

各紙が論評

 「8割の知事が『政府の説明は不十分』と指摘」――「朝日」十五日付、有事法案についての全国知事アンケートの結果です。

 有事法案に直接かかわる自治体でさえ、「不十分」といわざるをえない政府の説明。まして十四日に「修正案」を初めて目にした国民にとっては、寝耳に水。

 地方紙は社説で、「いまなぜ有事法制なのか、何のため、だれのための有事法制なのか、有事法制によってほんとうに『国が守れる』のか、国民の基本的人権や地方自治や『知る権利』などを軽視してまで守るべき『国』とは何か。そういった本質的な疑問はまだまだ手放すわけにはいかない」(福島民友新聞十四日付)「ドアの向こうで与野党が何やら話し合っていたかと思えば、はや翌日は特別委通過である。(中略)有事法制は限りなく正体がぼやけている。米国の戦争に自衛隊が参戦する『テコ』にもなりかねない」(愛媛新聞十五日付)など、「密室」による「修正」合意や法案そのものに厳しい目を向けています。


法案の内容わかりやすく

普及広く

イラスト・パンフレット
日曜版(5月18日号)漫画大特集

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パンフ『危ない! 有事法制』発行は日本共産党中央委員会出版局定価100円(送料事似歯円)ご注文は最寄りの日本共産党地区委員会または日本共産党中央委員会出版局(ファクス03-3470-1505)へ

 日本共産党は、有事法案の危険な内容を広く知らせた「しんぶん赤旗」の号外とともに、緊急出版したパンフレット『危ない! 有事法制』、有事法制問題を大特集した「しんぶん赤旗」日曜版(5月18日号)を広く普及し、「日本を米国の戦争に参戦する道を止めよう」と各地での取り組みをつよめています。

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有事法制問題を大特集した日曜版5月18日号

 有事法案について自民・公明や民主党などはまともな審議もしないで衆院通過を強行しました。一般新聞も与党と民主党との駆け引きは報じても法案の内容・問題点はほとんど取り上げることはなく、国民の多くに危険な内容が知られていないのが実情。パンフや日曜版はよく知ってもらう格好の宣伝資料です。

 パンフ『危ない! 有事法制』は、同法案が「日本を守る」ためのものではなく、イラク型の米国の戦争に、日本が武力行使をもって参戦し、これに国民を罰則つきで動員していくものであることをイラストつきで全体像を分かりやすく解明したもの。各地の普及のなかで「友達とまわし読みして勉強します」という若いカップル、「学習会で使ってみます」という団体職員など気軽に手にとっての利用がすすんでいます。

 日曜版18日号は漫画四ページの特集で、有事法制で米国の海外での戦争に日本が参戦していく仕組みをわかりやすくしめし、同案の危険性を訴えています。


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