2003年5月17日(土)「しんぶん赤旗」
有事関連三法案の衆院通過をめぐって、地方紙のいくつかは社説であらためて法案への懸念や疑問を表明しています。国会では「圧倒的多数の賛成」で衆院を通過したものの、国民のあいだでは依然として有事法案への批判と不安が消えていないことを示しています。
有事法案が衆院通過した十五日は、沖縄の本土復帰三十一年目の日でした。
沖縄タイムス十五日付は、本土復帰と有事法案の動きを重ね合わせながら、「米軍軍政から沖縄県へ、常に基地の過重負担を強いられてきた沖縄の戦後史を振り返るほどに、日本の変化に強い懸念を感じざるを得ない」と表明。「日米同盟の進展から見えるのは、有事関連法案が、専守防衛の範囲を超え、自衛隊と米軍の共同行動の拡大へ道を開く懸念である」と指摘しています。
琉球新報も、十六日付で「沖縄県民は戦後、米軍統治下にあって事実上の有事法制下の市民生活がどんなものかいやというほど体験してきた」とのべ、「国民的な論議と慎重審議を求めたい」と表明しました。
米軍との軍事行動によって有事法制が発動するのではないかという懸念も特徴的です。
静岡新聞は、十五日付で「政府は日本から離れた地域で自衛隊が攻撃を受けた場合に『武力攻撃事態』と認定する可能性があることを認めている」と指摘し、「日本が直接侵略されていなくても、米軍を支援する自衛隊への攻撃を日本有事と認定する場合もあり得ることになる」と批判します。
愛媛新聞十五日付も「最大の懸念は『有事』の概念がどこまで広がるのかという点である。政府見解では、日本に対する直接の武力攻撃でなくとも米軍有事が国内有事に連動する可能性を認めている」と指摘。「米国の戦争に自衛隊が参戦する『テコ』にもなりかねない」と批判しています。
与党と民主党との「修正」合意についても、こうした点を懸念しています。中国新聞は、十四日付で「修正協議に合意したといっても、有事の認定基準は各案とも依然として分かりにくい。米軍支援と自衛隊出動の範囲など、疑問は残ったままである」と指摘。山形新聞十五日付も「修正」合意にたいし「政府案の欠陥を根本的に是正するものではない」と指摘し、「法案の対象となる有事には、実際に武力攻撃を受けた場合だけでなく『武力攻撃が予測される場合』も含まれ、あいまいさが残っている。…行動も無原則的に広がりかねない」と批判しています。
愛媛新聞(前出)は民主党にたいして、「最重要問題としていたはずの『有事の概念』は素通りしてしまった」と批判しています。
神戸新聞十六日付は、核兵器を積んでいない証明書の提示がない艦船の神戸港入港を拒否する非核神戸方式との関係で「有事となれば空港や港湾の強制使用も想定されるため、神戸方式は事実上、有名無実化する恐れもある」と懸念を表明。
北海道新聞も「現実の法案は、政府の指示の下、自衛隊と米軍が円滑に行動できるよう、国、地方公共団体、民間が一体となって支援することが主眼だ」と指摘しています。