日本共産党

2003年5月17日(土)「しんぶん赤旗」

なし崩し的不安定雇用の拡大

労働者派遣法改悪 参考人の陳述から


 十六日の衆院厚生労働委員会で、民主法律協会派遣労働研究会の綱本守さん、日本労働組合総連合会(連合)総合労働局長の龍井葉二さんがおこなった労働者派遣法・職業安定法両改悪案についての陳述(要旨)は、次のとおりです。


常用雇用の代替させない歯止めを

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意見をのべる綱本氏=16日、衆院厚生労働委

民主法律協会 綱本 守さん

 派遣労働者の保護と派遣先常用雇用の代替をさせないという観点に絞って陳述します。

 派遣労働者の相談の第一は、基本的な権利である有給休暇や生理休暇、出産休暇などの取得が困難となっていることです。

 「そろそろベースアップをしてほしい」と派遣元に話したところ、「次の契約は更新しない」と通告を受けた女性も相談にきています。生活に一番直結しているのは、「派遣契約が中途で解約された」「契約更新を拒否された」というもので、派遣が企業のリストラに利用されることもあります。

 たとえば、A社では、短期契約で繰り返し働いてきた労働者全員を、株主がやっている派遣会社に移籍し、六カ月契約の派遣労働者として元の職場で働かせました。二年目に、契約解除、解雇が言い渡された。有志が労働組合を結成し、解雇を食い止めました。これらは労働組合とかかわりが持てたことで解決しましたが、派遣労働者の多くは組合に加入できず、労働協約の適用もなく、孤立させられています。

 派遣は、禁じられていた労働者供給事業、中間搾取を、一定の要件を条件に認めたもので、常用代替を促進しないとされてきました。要件の柱は派遣対象業務と派遣期間を定めることですが、たびたびの改正で派遣業務は拡大され、派遣期間も延ばされてきました。いま必要なことは、派遣労働者の保護と常用雇用の代替をさせない歯止めをかけることです。

 第一に、派遣先均等待遇を保障すること。派遣先によるダンピングを防止するためには、派遣先均等待遇を保障する以外にありません。

 第二に、派遣先雇用を保障すること。派遣先常用雇用の代替を促進させないために、派遣期間を過ぎた派遣労働者を、派遣先に直接雇用させる歯止めをつくることです。

 第三に、派遣先と派遣元による連帯責任を義務付けること。賃金や各保険について、双方が連帯して責任をもつよう義務付けることで、派遣労働が正常雇用の例外として許されるものと考えます。

 第四に、労働組合の権利を保障すること。派遣労働者の労働組合活動の権利を明記しなければなりません。

 他国の法律からも日本は遅れています。日本の労働者全体を保護する観点を貫くべきです。


働く側のニーズに応えていない

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意見をのべる龍井氏=16日、厚生労働委

連合総合労働局長 龍井葉二さん

 今回の提案はかなりひどい。出発点が人材業界人材ビジネスのニーズ、派遣先のニーズであり、人件費コスト削減という言葉がありますが、なりふりかまわぬ今の経営のあり方がそのまま反映しています。労働者保護をつかさどるべき厚生労働省の提案の法律とは到底思えない。

 働く側のニーズは何なのか。派遣で働きたいという人はいますが、ずっと派遣で働こうという人は全体の5・6%、つまり正社員で働こうとしてもその仕事がない。いってみれば超長時間残業の正社員か不安定雇用か、非定型雇用かという負の選択肢の中でかろうじて選んでいることがニーズだと語られている。そして派遣期間という問題でもニーズが語られています。

 上限期間の延長が雇用期間の安定につながる何の保障もない。むしろ、いつでも切れるという、働く側ではなく使用者側の選択肢だけを拡大することになるのは重大な問題です。

 もう一つの問題は、いろいろな派遣法のルールが積み重ねられるなかで、正社員代替の防止ということが言われてきました。いまなにが起きているか。露骨な代替です。

 一例で、大手の銀行であるセクションで女性の正社員二人が配転になった。いまいる派遣の人にその職務が回される。当然労働条件はものすごく低く、残業がものすごく多い。

 これが例外でなくむしろ主流になりつつあるのではないか。日本の雇用システムが築き上げてきたものの適用除外がどんどん増える、いってみれば非定型が増える、その重要な柱として今回のものが位置付けられようとしています。非定型雇用に対してどういう枠をはめていくかということが本来ここで議論してほしいことなのに、そういう視点がない。

 今のなし崩し的な不安定雇用、雇用がただ増えればよいというのではない。良好な雇用機会のための整備をぜひお願いしたい。


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