2003年5月17日(土)「しんぶん赤旗」
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「『有事』の範囲を際限なく広げる恐れがある」−−自衛隊の海外での武力行使に公然と道を開く有事関連法案が衆院を通過した十五日、中国のメディアは、同法案に懸念を表明する論評を相次いで発表しました。
中国新聞ネットは十五日、「『平和憲法』の聖域破る 日本の『有事法制』成立へ」と題する論評を掲載。有事法制がさかんに議論されるようになった背景として、米国が世界軍事戦略での日本の役割をさらに拡大しようと求めていることがあると指摘。「(日本国内で)『歴史の重荷』を捨てるために『平和憲法』の聖域を破り全面的に政治大国、軍事大国になろうという波乱が巻き起こされるようになった」と述べています。
また同記事は、同法案が「『武力攻撃事態』の定義に見られるように多くの重要部分の規定があいまいだ」として、「『専守防衛』の方針に疑念を抱かせるだけでなく、政府の内部にある『先制攻撃』を主張する声に現実的な可能性を持たせるものだ」と批判しています。
有事法制特別委員会で同法案が可決された十四日、中国青年報は、日本政府のいう「有事」には日本が攻撃されたという「事実」だけでなく、攻撃される危険がある場合が含まれており、その場合でも自衛隊の出動が可能になると指摘。このような「危険」が「予測」される事態の判断は日本政府が一方的に行うため有事の範囲は際限なく広げることができると懸念を表明しています。
日本が武力行使の範囲を広げる背景には、日本の有事法制制定や日米同盟を米英同盟のような方向に発展させることを求めた米国防大学国家戦略研究所の対日特別報告(アーミテージ報告)が米国の対日政策の基礎となっていることがあると指摘。米国は日本など軍事同盟国の力を借りて、自らの世界戦略の礎石を維持することを狙っているとしています。
中国青年報はまた、十三日付の朝日新聞「天声人語」が日本の過去の「有事」は「自ら招いた『有事』だった」としていることに着目。「有事立法の目的がどこにあるというのか心配させられる」と述べています。
光明日報十五日付は、「事態が今後どのように発展するにせよ疑いないことがある。有事立法が成立すれば、日本の軍拡はどんどん進められてしまうということだ」と懸念しています。
日本の有事法制反対運動については、新華ネットが十四日、新聞労連(日本新聞労働組合連合)が有事関連法案の廃案を求める緊急アピールを十三日に発表したことを報道しました。また三日付で、憲法記念日の集会で日本共産党の志位和夫委員長や社民党の土井たか子党首が有事法制廃案を訴えたことを伝えました。