2003年5月17日(土)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 ブッシュ大統領がキリスト教原理主義者だとの記事をよく目にしますが、これはどういう潮流なのでしょうか。(千葉・一読者)
〈答え〉 アメリカの政治は、建国以来、さまざまな宗教団体や宗派教派を横断した宗教運動とからみあって、おこなわれてきました。二十世紀の初期から、キリスト教原理主義という語がアメリカのプロテスタントのなかで使われるようになります。プロテスタントの主流の自由主義的神学派にたいして、『聖書』の文言を絶対視する少数派が原理主義(ファンダメンタリズム)です。
原理主義の宗教運動は、ラジオやテレビなどを利用して布教し、福音派とよばれるプロテスタント勢力となります。この伝道で有名になった人物がビリー・グラハムです。グラハムたちは、福音派のなかでも、ベトナム侵略を支持し、共産主義への憎悪をふくんだ宗教右翼を形成してきました。今日では、同時多発テロ以後に発言力を増したネオコン(新保守主義)と呼ばれる好戦勢力と結びついた、「ビリー・グラハム伝道協会」「キリスト教徒連合」「フォーカス・オン・ザ・ファミリー」などの潮流をさして、キリスト教原理主義と呼ぶことが一般的です。キリスト教原理主義は、中絶禁止、銃規制反対、進化論否定、善悪二元論、家族の重視などを主張しています。
父親ブッシュ大統領は、湾岸戦争のさいに、ビリー・グラハムを招いて勝利を祈りました。息子ブッシュが、石油事業に失敗して酒びたりになったとき、「回心」させたのもビリー・グラハムだったという話は有名です。四月十八日の米国防総省での礼拝では、ビリー・グラハムの息子のフランクリン・グラハムが登場し、イスラム教を「邪悪」と決めつけたとのことです(「朝日」四月三十日付)。
キリスト教原理主義の独善的でイスラム敵視の立場には、カトリックやプロテスタント各派などキリスト教界からも批判の声があがっています。
(平)
〔2003・5・17(土)〕