2003年5月18日(日)「しんぶん赤旗」
十九日から参院に論戦の舞台を移す有事法制関連三法案−。衆院でのわずかな審議でも、法案のもつ危険な本質がいよいよ明らかになっています。
海外での武力行使 |
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衆院での審議では、米軍支援のために海外に展開する自衛隊が組織的・計画的な武力攻撃を受ければ、「わが国」への攻撃とみなして武力で反撃、応戦する−つまり、米国の戦争で自衛隊が公然と海外で武力行使する−ことが、大きな問題になりました。
民主党は「修正」案提出にあたっての説明文書(四月三十日)で「わが国領域から遠く離れた場所において攻撃が発生した場合、これを(有事法制が発動される)武力攻撃事態(武力攻撃予測事態)と認定することは、わが国の国是である専守防衛の観点から問題が生じかねない」と指摘。その「歯止め策」について「国会答弁等で確認」するとしていました。
しかし、政府は従来の答弁を変えることなく、法案の採決が強行された十四日の衆院有事法制特別委員会でも、小泉純一郎首相は「公海上にあるわが国の艦船にたいする組織的・計画的な武力の行使は、わが国にたいする武力攻撃に該当し得る」とあらためて認めたのです。
ところが、民主党は…。
前原誠司議員(民主党)(政府の答弁で歯止めについて)ある程度の担保ができたと思っている。法理念としては、日本の領土、領海、領空以外、あるいは公海上でも(自衛隊が組織的・計画的な武力攻撃を受ければ武力行使することは)あり得るけれども、そういったことはほぼ想定をされない。(十四日、衆院有事特別委) |
与党とともに共同「修正」案を提出した前原議員は、同じ日の委員会で、「法理念」としては「あり得る」が、現実には「ほぼ想定をされない」から「ある程度の担保ができた」とのべたのです。
しかし、九日の衆院有事特別委では、同党の別の議員が、この問題でまったく逆の指摘をしていました。
筒井信隆議員(民主党)理論的、法制度上排除されないといっているから、そこを問題にしているので、現実問題としていっさいそういうことは起こり得ないとするならば、法制度上はっきりそう規定すればいいではないか。 |
“担保をとる”というなら、「法制度上はっきりそう規定すればいい」のに、そうしないところに、自衛隊が海外での武力行使にのりだす現実の危険が示されているのです。
米軍支援法制 |
木島日出夫議員(日本共産党)「武力攻撃予測事態」における米軍支援法制に、周辺事態法やテロ特措法につけられている「限定」をつけるのか。 石破茂防衛庁長官 わが国にたいする武力攻撃が予測される事態は、周辺事態法とはおのずから異なった局面だ。そういう事態だから、法案はそのようなことになる。(十四日、衆院有事特別委) |
有事三法案の一つ、武力攻撃事態法案は、米軍への「物品、施設、役務の提供」=兵たん支援を定めています。政府は、日本が攻撃を受けていない「武力攻撃予測事態」から実施できるようにするとしています。
一方、周辺事態法やテロ特措法は、海外で戦争をおこなう米軍への兵たん支援を定めたものですが、憲法上の「制約」がつけられています。
支援は、戦闘がおこなわれない地域に限り、戦闘地域になりそうな場合は、中断・撤退するという「制約」です。
ところが、武力攻撃事態法案が定める米軍支援には、こうした「制約」はついていません。「制約」をつけないどころか、周辺事態法とは違った内容になるというのが、石破防衛庁長官の答弁です。
「今後、米側のニーズを踏まえて(内容を)具体的に検討し、必要な法制(米軍支援法制)を整備する」(川口順子外相、十三日、衆院有事特別委)というのです。
米国は、アーミテージ現国務副長官らが作成した対日政策報告書(二〇〇〇年)にみられるように、日本に集団的自衛権の行使を迫っています。
「米側のニーズを踏まえて」つくられる米軍支援法制は、周辺事態法などにもとづき海外に展開する自衛隊が、「武力攻撃予測事態」を口実に、戦闘地域でも米軍への支援をおこなう道を開きかねません。(つづく)