2003年5月20日(火)「しんぶん赤旗」
【パリ19日浅田信幸】ベルギーで十八日、総選挙(下院百五十議席、上院四十議席)の投開票が行われ、フェルホフスタット首相率いる自由・社会連立の与党諸党がともに前進し、過半数の議席を確保しました。なかでもフラマン系(オランダ語系)とワロン系(仏語系)を合わせた社会党が大きく躍進しました。
二週間前に与党を離脱した環境保護派は議席を四分の一に後退させて惨敗。前回、四十年にわたる長期政権から敗退した旧キリスト教社会党の後継二党も議席をさらに後退させ、政権復帰の道を断たれました。極右のフラームス・ブロックは前進し、過去最大の議席となりました。
四年前に誕生した自由・社会・緑の「虹の連合」フェルホフスタット政権は、大きな失政がなく、イラク戦争では80%を超える圧倒的な国民世論を背景に反戦の立場を貫きました。争点があいまいだと言われた選挙ですが、この政府の姿勢が改めて国民の信任を受けた形となりました。
フェルホフスタット首相は十八日夜、「国民はわれわれに国を近代化する仕事を続けるように信任を与えてくれた」と勝利宣言しました。
ベルギー下院(定数150)選挙 最終結果の議席予想は次のとおり です(開票率98%)。 ▽社会党 ワロン系 25(6増) フラマン系 23(9増) ▽旧自由進歩党 改革運動 24(6増) 自由民主市民党 25(2増) ▽旧キリスト教社会党 人道民主センター 8(2減) キリスト教民主党 21(1減) ▽環境保護派 4(7減) ▽フラームス・ブロック 18(3増) ▽その他 2 ※( )内は前回比増減
ベルギー総選挙は、与野党の政策がどれも似通って争点が明確でないといわれ、それだけに、四年間のフェルホフスタット政権にたいする信任投票の意味合いが、強くなりました。
有権者の印象も生々しいイラク戦争で、同政権は独仏とともに反戦の立場を貫きました。国民世論の間では戦争反対が終始80%を超えており、政府の姿勢にたいする国民の信任を示しています。
与党の前進の中でも、前回比で十五議席増やした社会党の躍進が注目されます。
争点なき選挙とはいえ、世論調査によると国民の関心と不安は、医療保障の問題が第一にあがっていました。自己責任ではなく国による保障に重きを置いた社会党の主張に支持が集まりました。
マスコミの関心を呼んでいるもう一つの選挙結果は極右フラームス・ブロックの前進です。同党は「フランドル地方の独立」、雇用や社会保障での「民族的優先権」(移民排斥)を主張し、同地方で18%(前回比3ポイント増)、ベルギー第二の都市アントワープでは30%の得票率をあげました。
同党の伸張は、失業問題が深刻化した八〇年代からの現象ですが、今回の選挙結果には、〇一年九月の米国での同時多発テロ以後強まった反イスラムの風潮と、アントワープ市のオール与党体制「反フラームス・ブロック連合」のもとでの幹部による公金横領スキャンダルなどが、影響を及ぼしたとみられています。(パリで浅田信幸)