2003年5月21日(水)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 タンカーによる流出油被害への補償限度額が引き上げられるようですが、事故対策はどうなっていますか。
(島根・一読者)
〈答え〉 タンカー事故などの油濁被害は、一九六九年の民事責任条約と七一年の国際基金条約で、▽船主は無過失でも一定額まで賠償(故意・過失には制限なし)▽船主の責任限度額を超えた損害は、ロンドンの国際油濁補償基金が一定額まで補償します。九二年の両条約改定議定書では、補償限度額は約二百二十億円となっています。
その後、九三年の英国沖でのブレア号事故や九七年の日本海でのナホトカ号事故など、大規模事故が続発。ナホトカ号事故では六千トンもの重油が流出し、島根県から秋田県にいたる沿岸地域を汚染しました。被害関係者の損害賠償請求額は三百五十億円以上となり、基金の限度額を大きく超過していました。
このような事態を受け、国際海事機構(IMO)は二〇〇〇年に船主と基金の限度額を約50%上げる決議を採択しました。今年十一月に発効し、限度額は約三百二十億円となります。これにあわせ、国内法である油濁損害賠償保障法の改正案が国会審議されています。
ナホトカ号事故が起きた日本海では七一年、九〇年にも大規模な油流出事故があり、体制不備が指摘されていました。しかしナホトカ号事故当時も日本海側は著しく手薄で、海上保安庁の管区によっては近海用の油回収艇もなく、外洋で作業するには名古屋港の大型油回収船、清龍丸を、四日かけて派遣するほかないという状況でした。
日本共産党は、政府の対策の遅れをただし、日本海側にも大型油回収船を配備するなど抜本強化を提起しました。政府も検討を約束し、九八年度は海上保安庁の油防除整備費を六億六千万円計上しました(前年までは七千万円程度)。現在、大型油回収船は北九州港と新潟港にも配備されています。しかし清龍丸でも三人の欠員があるなど、人員体制はひっ迫しており、補充強化も課題です。
(清)
〔2003・5・21(水)〕