日本共産党

2003年5月26日(月)「しんぶん赤旗」

有事法制

米の要求で“制約突破”狙う

戦闘地域入り/国民の強制動員へ


 「戦闘地域にはいかない」「国民を強制動員できない」――。政府・与党などが執念をもって推進する有事法制の最大の狙いは、米国が海外でおこなう介入戦争に日本が参戦するうえで、この“二つの制約”を突破するところにあります。それは米国のかねてからの強い要求でした。

出発点は96年の安保共同宣言

 米国がアジア太平洋地域で起こす戦争に日本が共同してのりだす方向を初めて示したのは、一九九六年の「日米安保共同宣言」でした。同宣言にもとづき、九七年に日米両政府で合意されたのが日米軍事協力の指針(ガイドライン)でした。

 ガイドラインは、日本が武力攻撃を受けていない「周辺事態」、つまり米国がアジア太平洋地域で介入戦争をおこなうにあたって、自衛隊が米軍に、補給や輸送、医療などの兵たん支援をおこない、これに日本の自治体や民間企業・機関を動員することを定めました。

 しかし日本政府は、自衛隊の活動が海外での米国の武力行使と一体化することを、憲法が禁止する集団的自衛権の行使にあたるとし、ガイドラインでの米軍支援は、戦闘地域(前線)とは一線を画した「後方地域」に限るとしました。つまり、「戦闘地域には行かない」という制約です。

 このため、ガイドラインを国内法に具体化した周辺事態法は、海外で米軍を支援する自衛隊の近くで戦闘行為が起こったり、それが予測される場合には撤退する、つまり、「危なくなれば逃げて帰る」ことになりました。

 また、国民の強い反対で、自治体や民間企業・機関に米軍支援を要請できても、「強制はできない」という制約もつきました。

 これに米国は強い不満を抱き、この「戦闘地域には行かない」「自治体、民間企業・機関を強制動員できない」という二つの制約を取り払うよう繰り返し要求。これに呼応して政府・与党内でもそうした主張が相次いできました。(別項)

新支援法制の狙いは明らか

 政府は今後、有事法案にもとづき米軍支援法制を新たにつくるとしています。同法制が適用される「武力攻撃予測事態」は、「周辺事態」とも重なり合うとしています。

 日本共産党の筆坂秀世政策委員長は、「予測事態」での米軍支援に「戦闘地域には行かない」という制約をつけるのかと繰り返し追及しました。(二十日の参院有事法制特別委員会)

 しかし、政府は「今後の検討」と繰り返すだけで、「戦闘地域に行かないようにする」とは一言もいいませんでした。

 また、日本共産党の小泉親司議員の追及に、政府は、米軍支援法制で自治体や民間企業・機関を強制動員の仕組みを具体化することを否定しませんでした。(二十二日の参院有事特別委)

 米軍支援法制が戦闘地域での自衛隊の支援に道を開き、自治体や民間企業・機関を強制動員するねらいは明白です。


【前線でも】

 「後方地域と前線との線引きは難しくなるという議論もある。…地理的範囲を厳密に制限することは、周辺事態安全確保法を有名無実化することとなりかねない」(防衛庁防衛研究所を事務局にした防衛戦略研究会議の報告、二〇〇一年五月)

 「後方『地域』支援に限らず…正面でも、米国と共同行動をとることを可能にすべきだ」(山崎拓自民党幹事長、『憲法改正』)

 「(米軍支援中に戦闘が始まったとき)『ここは危なくなりましたから、さようなら』といった場合、同盟国って何だろう。実際の現場でそれが本当にもつのか」(石破茂防衛庁長官、三月五日)

【集団的自衛権】

 「集団的自衛権を禁じていることが両国の同盟協力を制約している」(アーミテージ氏=現米国務副長官らによる米国防大学報告、二〇〇〇年十月)

 「集団的自衛権を行使する権利をなかなか明確にしないために、アメリカの軍事計画は、きわめて複雑なものになっています」(ジェームズ・アワー元米国防総省日本部長の自民党国防部会での講演、〇一年三月)

 「集団的自衛権の行使を禁じていることで、米軍の軍事作戦が極めて複雑なものとなってしまい…」(自民党国防部会の提言、〇一年三月)

 「(憲法の枠組み変更の)最初の段階目標は、『武力行使の一体化』禁止原則の緩和である。…周辺事態について、自衛隊が米軍を効果的に支援することを妨げている内閣法制局の見解は、きわめて現実離れした独善的なものである」(マイケル・グリーン氏=現米国家安全保障会議部長の論文「日本が取るべき現実的安全保障政策とは」)

【強制動員】

 「協力に消極的な民間機関や地方公共団体に対し、必要な協力を行うよう強制できる権限を総理大臣に与えるよう、さらに立法措置が必要である」(同、共同論文「冷戦後の日米同盟」)


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