日本共産党

2003年5月28日(水)「しんぶん赤旗」

小泉首相ら言いたい放題

「自衛隊は軍隊」「憲法改正が望ましい」

集団的自衛権の行使めざす


 「自衛隊が軍隊であると正々堂々と言えるように、将来やはり憲法を改正するというのが望ましい」―小泉純一郎首相が二十日の参院有事法制特別委員会でこう答弁するなど、憲法論戦のタガがはずれています。野党である民主、自由両党が賛成して有事三法案が衆院を通過したことを背景に、「次は改憲」とばかりに勢いづいた形です。

有事法制行きつく先

予防線を解除

 小泉首相の冒頭の答弁は、自衛隊出身の田村秀昭議員(自由)が自衛隊トップに“名誉と地位を与えよ”と質問したことにたいするものです。有事法案を九割の賛成で衆院通過させたことからくる“ゆるみ”や委員会審議の緊張感のなさからだけとは考えられません。

 小泉首相は、二〇〇一年四月の自民党総裁就任会見で「自衛隊が軍隊でないというのは不自然だ」「(自衛隊が)憲法違反といわれないような憲法をもったほうがよい」とのべるなど、改憲発言を繰り返してきましたが、首相になってからは直接改憲発言ととられないよう、さまざまな予防線も張ってきました。

 「侵略に対して武力をもって立ちあがる集団を軍隊というならば、そういう定義もできる。しかし、国際社会の中で軍隊の定義には当てはまらない点がたくさんある」(二〇〇一年五月十日衆院本会議)とのべたり、「日本の自衛隊を世界は軍隊とみている」(同年十月十日参院予算委)と“間接話法”にするなどです。

 今回、「自衛隊は軍隊」とストレートに言明し、さらに「憲法改正が望ましい」と答弁したことは、これまでの首相答弁からも一歩踏み込んだもの。憲法擁護義務(憲法九九条)をもつ首相として許されない答弁です。

閣僚にも影響

 首相の改憲答弁は、その他の閣僚にも影響しています。

 福田康夫官房長官は二十二日の参院有事特別委で、政府の憲法解釈でも行使が許されないとしている集団的自衛権について「一内閣ということだけでない、国民、国会全体の問題である」「内閣としても判断するときが来るのかなと思う。そういう時期の早からんことを祈っている」などとのべました。明言こそしなかったものの、集団的自衛権行使を容認する時期が早く訪れることを期待した答弁です。

 これも「(集団的自衛権の行使について)さまざまな角度から研究してもいい」(二〇〇一年五月十日)としていた小泉首相の容認論からさらに一歩踏み込んだ形です。

 その翌日の委員会では、憲法改定について聞かれた福田長官は「現行憲法がこれからの時代に適応するかどうか、大いに議論をし、一つの形にまとめあげていただきたい」と改憲案策定に前向きととれる発言もしています。

民主など誘発

 首相や官房長官の答弁が、いずれも野党議員の質問に誘発されたものだというのも有事特別委の論議の特徴です。首相答弁は自由党、官房長官の答弁はそれぞれ、民主党議員、国会改革連絡会の議員へのものでした。

 有事三法案の「修正」をまとめた民主党の前原誠司議員は「武力行使の一体化にならないんだから、集団的自衛権(の行使)にはならないというのは、他の国からみれば理解のできないこと」と発言。こうした解釈が「必ず壁にぶつかっていくのはもう間違いない」とのべ、「最終的には国民に資するような政府の解釈というもの、あるいは憲法というものを築き上げていく必要がある」と改憲論を展開しました。(二十二日参院有事特別委)

 こうした改憲論は、有事法制の先になにがあるかを明確に示しています。

 石破茂防衛庁長官は、有事法案について集団的自衛権の行使と受け取られないように、「非常に精密なガラス細工のような論理の組み立てはしている」(二十二日参院有事特別委)とのべます。同時に、「ガラス細工」のままでは、「個別的自衛権が行使できない状況」、つまり日本が武力攻撃を受けていない場合の米国との共同行動について「(武力行使との)一体化というものにかなり抵触する場面が多いのではないだろうか」(二十日同前)と不安をもらします。

 米国が自らの気に入らない国に先制攻撃を仕掛けた場合、自衛隊が支援し、国民を強制動員するだけにとどまらず、「ガラス細工」抜きに公然と武力行使ができる集団的自衛権の行使へ―相次ぐ改憲答弁の行き着く先です。(藤田健記者)


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