2003年5月29日(木)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 テロ事件直後にアメリカで施行された「アメリカ愛国法」とは、どんな法律ですか。(埼玉・一読者)
〈答え〉 「アメリカ愛国法」とは「テロリズムを摘発し阻止するため適切な手段を提供し、アメリカを団結させ強化する法律」の別称で、二〇〇一年十月二十六日に成立しました。同年九月十一日の同時多発テロ事件後、テロへの恐怖心と報復感情があおられ、炭疽(たんそ)菌汚染事件が発生し、アフガニスタン戦争が強行されるなか、異例の短期間で採択されました。
徹底審議が行われなかったため、テロの定義や、テロ防止措置と市民の自由擁護、プライバシー保護との関連はあいまいにされる一方、連邦捜査局(FBI)など捜査当局の権限は大幅に拡大されました。
愛国法は、テロに関連するとみられる外国人を七日間は司法手続きを経ずに拘束できるようにしました。また、〇五年末までの四年間、容疑者の電話や携帯電話の盗聴、Eメールの傍受を認め、インターネットの使用・通信記録をプロバイダーから入手できるようにし、テロ調査に関連するとみなせば個人情報の入手は裁判所の命令なしにできるようになりました。
同法の運用面では、イスラム系、中東系の移住者が特に狙い打ちにされ、「ビザ期限切れ」などを理由に七日を超えて長期間拘束されたり、中東出身学生の思想調査が行われ、「人種憎悪」に拍車をかけました。またブッシュ批判や戦争批判をした者を逮捕・尋問の対象にしたり、図書館で特定の本を読んでいる者を調査するといった事例もありました。
米司法省は現在、テロに限らず「国家安全保障上の利益を脅かす行為を行っていると疑われる米国民」のインターネット閲覧・検索記録やそのEメールの相手を、四十八時間は裁判所の許可なしに監視できるようにする、「国内安全保障強化法」=「第二の愛国法」の制定を狙っています。
(保)
〔2003・5・29(木)〕