日本共産党

2003年5月31日(土)「しんぶん赤旗」

主張

有事法案

アジアに広がる憂慮と批判


 有事法案にアジア諸国の批判が高まっています。

 批判は、中国、韓国とともに、シンガポールなど東南アジアにも広がってきました。

 「自衛」の範囲を、日本が攻撃されていない「周辺事態」に広げたうえに、「テロ特別措置法」でインド洋に派兵して戦闘中の米軍を支援する日本が、有事法制で海外派兵の道をさらに進もうとしていることに憂慮と警戒が強まっています。

先制攻撃の危険ある

 批判は「日本を守る備え」でなく「攻撃する備え」という有事法案の本質への理解と結びついています。

 それは、韓国の与野党の国会議員が日本の国会議員にあてた手紙で、「有事法制の影響は日本国内に限定されるものではない」「アジアの軍事・安保環境を悪化させる」とのべていることにも示されます。

 そうした批判は「『有事』の範囲が限りなく広がる」(中国青年報)、「“専守防衛”を攻撃型の“対外拡張”に転換させる」(シンガポール・聯合早報)との指摘にもあらわれています。

 有事法案は、小泉首相が「備えあれば憂いなし」とあたかも日本の国内問題であるかのように装っていることもあり、各国政府は慎重になっている面もありますが、少なくとも日本政府が建前にする「専守防衛」に反することは否定できません。

 中国政府が、「専守防衛」を堅持することが日本の長期的な国益やアジア太平洋地域の平和と安定に有利(外務省報道官)としてクギを刺すのもそのためです。

 批判者が重視するのは、有事法制によって日本が先制攻撃もできることになるということです。

 中国の人民日報は、有事法制で東アジアの安全保障は新たな危険に直面することになるが、それは日本が先制攻撃によって潜在的脅威を除くことになるからで、この「誤った防衛の論理」は国連憲章の目的に違反するだけでなく、暴には暴という悪循環になりうるとのべています。

 聯合早報も、「武力攻撃予測事態」を認定するのは日本政府であり、北朝鮮のミサイルが日本を攻撃する計画だと証明さえすればよいという防衛庁長官発言からすれば、先制攻撃も可能になると指摘しています。

 これらは、アメリカの先制攻撃戦略の戦争に協力する有事法制の本質に迫るものです。

 法案が与党と民主党の合意で衆院を通過したことにも、アジア諸国は衝撃を隠しません。

 人民日報は「民主党と自由党が自民党と手を結び、国会で新旧保守勢力を形成した」と指摘します。

 韓国・中央日報が、衆院議員の九割を超える支持を「衝撃的」とし、過去の軍国主義日本の亡霊の復活もありうるという「周辺国の憂慮と不信」を指摘します。この憂慮と不信こそ、かつて日本の残酷な侵略と植民地支配を経験したアジアの人々の共通の思いとみるべきでしょう。

アジアの平和へ連帯

 こうした批判の根底には、アメリカの覇権主義への批判が大きく広がっている世界の現実があります。

 ブッシュ政権に追随する小泉内閣が、この流れに逆らい孤立の道を歩むものでしかないことは、イラク戦争に反対する反戦・平和の運動が世界とアジアで空前の規模で発展したことにも示されます。

 有事法案に反対する日本の世論と運動は、覇権主義に反対し世界の平和秩序をまもる世界とアジアの人々と連帯し、二十一世紀の展望をひらくことにつながっています。


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