日本共産党

2003年5月31日(土)「しんぶん赤旗」

一億人に影響

政府が狙う年金大改悪

現役世代 保険料1.5倍、給付3割減も

年金世帯 控除へらし、がっぽり税金


 二〇〇四年度は、老後の命綱である公的年金の制度見直しの年。これに向けて、政府内でとんでもない改悪計画がすすんでいます。現役世代の保険料は上げながら将来の年金額を大幅に減らす一方、現在の年金世帯への課税を強化しようというもの。現役世代の加入者七千万人、受給者三千万人、合わせて一億人にも影響する歴史的な大改悪です。

 (山沢猛、秋野幸子記者)




収入減れば自動減額

厚生労働省

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 四年前の年金制度の改悪で政府は、六十歳から支給されている厚生年金(報酬比例部分)の支給開始を六十五歳に遅らせその上5%減らしました。この改悪で二十歳のサラリーマンは生涯に受け取る年金が千二百万円も少なくなりました。四十歳で一千万円減です。こんどはさらに保険料を引き上げながら給付を減らそうとしています。

 まず厚生労働省は昨年十二月に議論のたたき台(「年金改革の骨格に関する方向性と論点」)を出しました。このなかで、保険料率を段階的に上げながら、その「上限」を法律で固定する、その保険料収入の範囲内で年金を給付するという「保険料固定方式」といわれる案が有力です。現行制度のしくみは老後に受け取る年金額が加入年数などであらかじめ決められていますが、この「保険料固定方式」は、保険料収入が減れば、受け取る年金額も自動的に減らされます(変動制)。

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 同省の案は保険料率を最終的に(二〇二二年度)年収の20%(労使折半)にするというもの。現行(13・58%)の一・五倍の引き上げです。

 受け取る年金額はどうなるでしょうか。現在、厚生年金の給付水準は現役世代の手取り賃金の59%、約六割です。厚労省の試算では、そのときの経済と人口の状況によって52%(人口中位推計の場合)、さらに45%(人口低位推計の場合)に下がります。(グラフ上)

 モデル世帯(厚生年金に四十年加入、平均収入のサラリーマンで妻は専業主婦)で、現在の毎月の年金額は約二十三万六千円ですから、52%なら二十万八千円程度に下がる(12%減)ことになります。

 将来決まった年金を受け取れると思って高い保険料を我慢して払っているのに、その年金額がいつの間にか減ってしまう。これでは国民の将来不安はつのるばかりです。


“働きないのに多すぎる”

財務省、税調

 この厚労省案にたいし「まだ足りない、もっとやれ」と国民いじめをあおっているのが、財務省、政府税調などです。

 塩川正十郎財務相は、四月初めの政府の政策を立案する経済財政諮問会議で“年金は現役世代の四割でいい”と発言しました。「生産性のない者に(現役世代の手取り賃金の)60%保障している。だから保険料が高くなり、公的負担も大きくなる。所得代替率は40%でよいのではないか」。戦後日本の経済を支えてきた世代の苦労に冷水をあびせる発言です。

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 この塩川財務相の「40%」案で計算すると、さきのモデル世帯で、十六万円程度に下がります(32%減)。

 これと軌を一にして、経済財政諮問会議に参加する奥田碩日本経団連会長ら民間議員が、給付の大幅減、消費税を二ケタに引き上げて基礎年金の財源にあてることを主張しています。

 一方、政府税制調査会(首相の諮問機関)は、「世代間の公平性」をはかるという口実で、高齢者が受け取る公的年金への課税を強化し、年金額を減らそうとしています。現役世代に負担増を押しつけたので今度は高齢者にも同じようにやらなければ「公平性」に欠けるという言い分です。

 現在、年金は老後の支えという考えに立ち、複数の所得控除によって税の軽減をはかっています。「公的年金等控除」は六十五歳以上なら、最低でも年金所得百四十万円までは課税対象外です。「老年者控除」はさらに年間所得一千万円以下なら五十万円を課税対象から差し引くものです。(図参照)税調はこの公的年金等控除などを縮小・廃止することで年金から税金をもっと取ろうとしています。六月中旬以降に中期答申を出し小泉首相に提出するとしています。


国民への責任転嫁やめよ

 政府は年金改悪をめざす一方で、みずからの責任でやるべきことを棚にあげています。

 二〇〇四年度から、国民共通の基礎年金の国庫負担割合を、現行三分の一から二分の一に引き上げることが法律に明記されています。ところが、財務省は先延ばし、厚労省は「段階的実施」などといいだしています。社会保障を政府の政策の中心にすえ、ムダな大型公共事業の段階的半減、軍事費の削減などをすすめれば財源(〇四年度二兆七千億円)を生み出すことは可能です。

 また年金制度を安定させるためには、何よりも年金の支え手(加入者)を増やすことですが、小泉内閣は大企業のリストラを奨励し、「不良債権の早期最終処理」方針(竹中プラン)で中小企業つぶしをあおり、逆に支え手を減らすことばかりやっています。

 政府は国民への責任転嫁をやめて、みずからの責任こそ果たすべきです。


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