2003年6月3日(火)「しんぶん赤旗」
「イラクは四十五分で大量破壊兵器の使用の準備ができる」などとのべてイラク戦争の開戦をあおったブレア英首相。しかし、戦闘終結から二カ月近くたった現在でも大量破壊兵器の存在は確認されていません。英メディアは連日、政府が情報操作であざむき国民を戦争に導いたと批判を強めています。(ロンドンで西尾正哉)
「緊急性をつくり出すために機密情報に政治的な操作があった。それは首相の政治判断だった。私たちは誤り導かれ、だまされたのだと思う」―イラク復興への国連関与、首相の政権運営をめぐって国際開発相を辞任したクレア・ショート氏がサンデー・テレグラフ紙一日付に怒りをぶちまけました。
メディアは、首相がイラク戦争開始の口実としたイラクの大量破壊兵器保有の証拠をめぐって連日、暴露合戦を続けています。
一日の日曜紙では、サンデー・タイムズ紙が「首相がイラクの機密文書を改ざん」との見出しで、政府がイラクに関する機密文書を公表する際に、論争となる結論部分を意図的に削っていたと報道。インディペンデント・オン・サンデー紙は「ブレア首相が大量破壊兵器の信頼性のない証拠をいかに使ったか」を暴露しました。いずれも一面トップの大見出しです。
国民世論とメディアの批判の矛先は、イラクがすぐにでも大量破壊兵器を使用可能で英国が現実の脅威にさらされていると、開戦を急ぐ首相があおりたてたことに向けられています。
BBCオンラインの政治記者は「イラク戦争でブレア首相に現在向けられている追及ほど深刻なものはない。それらは一つの疑問へと煮詰まる。つまり、政府は英国を戦争へと故意に仕向けたのかどうかだ」と指摘しました。
ブレア首相は一日、「イラクの(大量破壊)兵器の証拠の存在を疑いなく確信している」と改めて、“疑惑”を払しょくしようとしました。しかし、最近の世論調査では、国民の27%が、首相が意図的にうそをついたと考えており、戦争へと誤り導いたとする人は63%に上っています。
怒りが収まらないのは、ブレア首相に説得されて議会で開戦に賛成を迫られた労働党議員たちです。同党のロイド議員は「懐疑的な国民を確信させるために非常に大きな努力がなされた。われわれを信じろ、アメリカを信じろと。議会が戦争について議論し採決したとき、疑問を投げかけた労働党議員は、これまでにないほど政府に団結するように求められた。問題は、国民もわれわれ国会議員すべても偶然にミスリードされ、うそをつかれたかどうかだ」と指摘しました。
インディペンデント紙のコラムニスト、スティーブ・リチャード氏も一日付で、「問題となっているのは、戦争の起源に関する無味乾燥な学問的な議論ではない。信頼、つまり政治指導者と有権者との間の関係に関するもっと幅広い問題だ」と、ブレア首相の信頼性が最も焦点となっていると強調しました。