2003年6月5日(木)「しんぶん赤旗」
日本共産党の吉岡吉典議員は四日の参院有事法制特別委員会で、周辺事態法と有事法制が、一九九六年の安保共同宣言、九七年合意の日米軍事協力の指針(新ガイドライン)を受けた安保体制=「新ガイドライン安保体制」の具体化であることを明らかにしました。
吉岡議員 日米安保条約には、日本領域外での米軍協力を取り決めた条文はない。どこに(協力の)歯止めがあるのか。
前原誠司議員(民主党、「修正」案提出者) 条文にもとづかない協力がありうるのか、(安保条約の)『目的の範囲内』(ということ)で法律をつくっていいのかという疑念を持っている。委員の指摘に共有するものがある。
六〇年当時、政府は安保条約を“もっぱら日本を守るための条約”と強調していました。
しかし、日米両政府は、安保共同宣言で、アジア太平洋安保化を打ちだし、ガイドラインで、「周辺事態での日米共同対処」を取り決めました。安保体制はこれまでとまったく異なって「アジア太平洋地域の平和と安全を維持していく上で極めて重要な枠組み」(橋本首相=当時)へと変質したのです。
吉岡氏は、こうした経過に触れながら、さらに周辺事態法で日本の「周辺」でおこなう米国の戦争に、日本が武力攻撃を受けていないのに自衛隊の参加を可能にし、有事法案によって、その戦争体制を整えようとしていることを批判しました。
その上で、政府が新ガイドライン・周辺事態法を「安保条約の目的の枠内」としていることについて、日本領域外での米軍協力の取り決めは、安保条約の条文にはないと指摘。「目的の枠内」ということで協力をすすめれば、自衛隊の協力には「歯止め」がなくなり、きわめて危険な運用になると指摘しました。
吉岡氏は、新ガイドラインの「実効性確保」のための措置として、共同作戦計画などを検討する日米機関である「包括的メカニズム」の設置などが進められており、その一連の措置の中に有事法案が位置づけられていることを指摘。「憲法によって戦争ができない国が、戦争ができる国に変わりつつある。国家をあげ、自治体、民間をあげて戦争ができる体制にするものだ」と批判しました。
吉岡 周辺事態法での米国の戦争への日本の軍隊=自衛隊の参加は、相手側からみれば、米軍の戦闘行動の一部分を担うものであり、武力攻撃を受ける対象になるのではないか。
石破茂防衛庁長官 そういうことがおこらないかといえば、起こらないように行動する。
吉岡 おこりうるから、おこらないように行動するということだ。認めたということだ。
吉岡氏は、米軍が在日米軍基地を使って武力介入をしたとき、相手国から攻撃対象になりうることを、ベトナム戦争当時に政府が“中立ではありえない”と認めた答弁も紹介しながら強調。政府がいくら「米軍の武力行使と一体化しない」と説明しても、相手国からいえば“敵対する”国になるとのべ、相手国に攻撃の意思と能力があれば、武力攻撃の対象になることを追及しました。
前原氏も「(米国が)不評やうらみをかったときに同じ危機が及ぶことはありうる」とのべて、認めました。
吉岡氏は「日本がアジア太平洋の安保枠組みなどといって、新たな防衛分担をしたから、攻撃を受ける可能性が出てくる」とのべ、日本がみずから、有事法制が発動される危険をつくり出していると批判しました。
吉岡 自衛権発動の手続き規定は、自衛隊法にもないはずだが、どうか。
防衛庁長官 こういう場合に自衛権を発動できるという条文はない。
自衛隊に武力行使を命じる手続きを定めた規定は、「開戦」につながる規定にもかかわらず、有事法案にも自衛隊法にもありません。政府は、「首相の判断」とするだけで、明確な規定がないことを認めました。
吉岡氏は、これは憲法で交戦権を否定しているからだと指摘。新ガイドライン安保体制のもとで、「開戦」につながる重大決定が「首相の判断」だけでおこなわれる危険性を指摘しました。