2003年6月7日(土)「しんぶん赤旗」
【ワシントン5日遠藤誠二】イラクの大量破壊兵器が見つからない問題をめぐり、米国内でブッシュ政権を追及する声があがっています。政権指導部が中央情報局(CIA)などに圧力をかけて情報を操作し、開戦の理由とした疑いが出ています。
ブッシュ大統領は五日、訪問先のカタールの米軍基地で演説。「われわれは(大量破壊兵器を)捜している。真実を暴き出す」「一つだけ確かなことは、フセイン政権がなくなったので大量破壊兵器を使用するテロリストもいないということだ」と指摘しました。大量破壊兵器が発見できないことへの批判に正面からこたえておらず、苦しい弁明です。ブッシュ大統領は、移動式生物兵器製造施設とされるものの押収をもって、「大量破壊兵器は見つかった」とのべましたが信用されず、大統領による「早とちり」との意見が大半です。
五日付のワシントン・ポスト紙は、戦争を遂行したいチェイニー副大統領ら政権指導部が、CIAに圧力をかけていた疑いがあることを報道しました。
この記事によると、チェイニー副大統領とリビー副大統領主席補佐官らが昨年、頻繁にCIAを訪れ、イラクの兵器計画、またフセイン政権とアルカイダの関連についての情報を収集。情報分析官の一部は、イラクが大量破壊兵器を開発していることを裏づけるような証拠を出すよう、圧力を受けたとされます。情報当局を訪れた中には、ウルフォウィッツ国防副長官、ファイス国防次官(政策担当)、テネットCIA長官らも含まれており、分析官に対し「威嚇するような態度」だったといいます。
ファイス国防次官は四日、記者会見を開き、「だれも圧力をかけていない」と否定しました。
四日付のニューヨーク・タイムズ紙は、CIAが、昨年十月に発表された最高機密の情報報告を再調査していると報道しました。この記事は、「一九九八年に国連の査察官がイラクを離れた後、イラクに関する情報の質が低下したにもかかわらず、米情報機関はイラクが兵器開発を続けていると憶測で決めつけた」との関係者の証言を紹介しました。
米上院情報委員会のロバーツ委員長は三日、この問題をめぐる公聴会を開く計画があることを明らかにしました。上院軍事委員会も公聴会を予定しており、両委員会合同で、政権が情報操作した疑惑を調査することになりそうです。ワシントン・ポスト五日付社説は「大量破壊兵器問題を投げ捨てているブッシュ大統領は米国の信用を傷つけている」として、米議会や国連査察官に情報を公開するよう求めました。