2003年6月7日(土)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 今国会で改定が審議されている密集市街地整備法とはどんな法律ですか。(東京・一読者)
〈答え〉 阪神・淡路大震災で大規模火災が発生したことをきっかけに、耐火性・耐震性に問題のある老朽木造住宅が密集し、避難・防災施設のない密集市街地の整備が重要課題となりました。密集市街地は全国に二万五千ヘクタールあり、多くは国の貧困な住宅政策のもと、一九六〇年代までにできたものです。一九九七年に制定された「密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律」(密集市街地整備法、密集法)は、こうした密集市街地の整備促進を目的としています。
しかし同法には、居住者の権利を大きく後退させる問題もあります。例えば、行政に建物の除去を勧告されると、所有者は立ち退きが必要となる居住者の代替住宅などの計画を作成しますが、居住者自身の同意を必要としません。計画が認定されると、所有者は借地借家法の「正当な事由」がなくても居住者との契約更新を拒絶し、移転を迫ることができます。密集市街地の住民の多くは家賃などの理由で移転困難な高齢者ですが、代替住宅の家賃補助も五年しかないなど、支援も不十分です。
さらに今回の改定案では、個別の対応では整備が進まないなどとして、密集市街地の一定区域に「柔軟な」整備事業を行わせようとします。事業組合や事業会社の「事業計画」は地権者の三分の二以上の合意で実施できるなどです。事業がはじまれば、事業前の権利を事業後の市街地の権利に置き換える「権利変換」などは地権者の過半数の賛成で成立するため、最初から三分の一近い反対を切り捨てられるのは問題です。
密集市街地の防災整備は必要ですが、当事者の理解と納得なくして進みません。権利を制限したり、多数決で見切り発車させるやり方は、現在全国的に行き詰まっている区画整理事業のように、問題解決も困難にしかねません。
(清)
〔2003・6・7(土)〕