日本共産党

2003年6月8日(日)「しんぶん赤旗」

イラク新法へ動き急

米いうがままの自衛隊派兵

占領に加担、憲法に違反


 政府・与党は有事法制の成立を待っていたかのように、自衛隊のイラク派兵を可能にする「イラク新法」の今国会提出に向け、動きを本格化しました。しかし自衛隊派兵はイラク復興にとっても、日本国憲法のかかわりから見ても、重大な問題点を抱えています。

復興に障害

 政府がイラク派兵を急ぐ背景には、米英軍が占領統治の長期化に伴って、イラク戦争に支持表明した各国に統治任務の分担を要求していることが挙げられます。外務省によると、すでに三十カ国以上が部隊派遣または派遣を決定。韓国、イタリア、デンマーク軍などはすでに活動を開始しているといいます。

 米国は日本政府に対しても「ブーツ・オン・ザ・グラウンド(地上部隊の派遣)」の表現で自衛隊派兵を非公式に要請したとされています。まさに、米国にいわれるがままの派兵なのです。

 政府は「主体的に判断する」「現地のニーズにもとづいて検討する」と繰り返します。しかし外務省担当者は、「米国の統治機構に派遣しているスタッフから連絡はくるが、統治機構そのものが新体制への移行期で、どのような方針で進んでいるのか全体像が把握できていない」とのべ、判断材料となる十分な情報が伝わっていないことを明かします。

 国連憲章に反する先制攻撃を行い、罪のないイラク市民を殺傷した米英軍の軍事的要請にもとづく自衛隊派兵は、明白な占領行為です。

 イラクでは連日、占領統治に反対するデモが行われていますが、「イラクの再建はイラク人の手で」との願いを踏みにじり、占領長期化に加担するものです。

 さらに、イラク国内で人道援助を行っているある非政府組織(NGO)関係者は「国連と占領機構のあいだで管轄をめぐって混乱が発生しており、援助活動に障害を与えている」といいます。

 国連やNGOの人道・復興支援を円滑に進める上でも、米軍主体の占領統治を補完する自衛隊派兵は否定的影響を与えるものです。

市民殺傷も

 イラク派兵はまた、憲法が禁じている、海外での武力行使そのものです。

 政府自身、一九八〇年に「相手国の領土の占領、そこにおける占領行政などは、自衛のための必要最小限を超える」との答弁書を出しています。このため、四月に米占領統治機構に外務省職員を派遣したときですら、「武力行使との一体化」との批判が出ました。

 自民党の山崎拓幹事長は三日、ウルフォウィッツ米国防副長官との会談の後、同副長官から「非戦闘地域での施設整備・通信・輸送での後方支援」を要請されたと強調しています。

 しかし、イラク情勢に詳しい酒井啓子・アジア経済研究所主任研究員は「現在のイラクを戦闘地域と非戦闘地域に区分するのは不可能」と断言します。

 その理由として、(1)フセイン政権の崩壊で大規模な戦闘は終結したが、各地で米英軍への襲撃が相次ぎ、連日のように死傷者が発生している(2)イタリア軍など同盟軍にも死傷者が発生している(3)占領軍を襲撃する勢力は一般市民にまぎれこんでおり、どこでも戦闘地域になりうる―ことを挙げました。

 このため、米軍は検問所で制止に従わなかった車両や、占領統治に反対するデモに発砲し、罪のないイラク市民をしばしば殺害。米軍当局は「自衛権の範囲内」として「合法化」しています。自衛隊員が「自衛のため」と称して、罪のないイラク市民を殺傷する危険性もあるのです。

 政府がまじめにイラクへの人道支援を考えるなら、占領軍に加担するのでなく、日本の経済力や技術力を生かし、国連中心の復興への支援にこそ力を入れるべきです。(竹下岳記者)


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