2003年6月8日(日)「しんぶん赤旗」
土曜日にけがをして近所の病院へ。翌日も来るようにいわれ、処置のため再診し、会計窓口で驚きました。日曜日の診療代として、保険診療部分以外に、保険外として千九百円を請求されたのです。聞くと、「時間外診療は特定療養費です」。え、保険はきかないの? 寺田 可奈記者
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厚生労働省保険局医療課に聞くと、「特定療養費は、高度先進医療や特別のサービス、アメニティ(快適さ)部分を患者の自費負担とすることで、患者の選択の幅を広げるものです」。
一九八四年、高度先進医療、差額ベッド代など患者が選択して医療を受ける部分について導入されたのを始めに、度重なる診療報酬の改悪で、現在では十三種類が特定療養費となっています(別表)。
予約診療や時間外診療で、特別料金を徴収できるようになったのは九二年。九六年には二百床以上の病院での紹介状なしの初診料が、二〇〇二年には、入院期間が百八十日を超える入院、二百床以上の病院の再診料などが特定療養費化されました。
「とくに問題なのは、入院が百八十日を超すと、入院基本料の15%まで(五万円ほど)を患者が自己負担するよう改悪されたこと。ベッドなど医療の周辺部分から、医療そのものへ特定療養費を広げた。質的転換です」というのは、全国保険医団体連合会事務局次長の寺尾正之さん。
「特定療養費の拡大は、診療報酬改定と合わせて中央社会保険医療協議会(中医協)の場で、国民にも知らされないまま論議され導入されています。特定療養費の拡大の形をとり、公的保険給付の範囲を限定化、縮小する。今後は、保険適用外の部分を拡大し、民間保険会社にまかせる『公民ミックス医療』が狙われています」
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昨年の改悪以降、「六カ月を超したら退院するか、自分で金を払えとは、患者にいえない」「特別養護老人ホームなどの受け皿がないのに、患者を追い出すことになる」と反対の声が強まり、百八十日を超す入院であっても、自己負担としない対象が広げられました。
しかし、入院基本料に自己負担を導入できたことについて、厚労省元幹部は「これができるのなら何でもできる」と評価。さらなる改悪をやめさせることが必要です。
患者にできることはなんでしょうか。「改悪反対の署名などに協力いただくこと、医療機関で特定療養費について値段も確認し、納得いくまで話し合うことです」と寺尾さん。
特定療養費の取り扱いは、医療機関に任されています。例えば、時間外診療で特別料金をとっている医療機関は、全国で百四十四施設。その一つが、記者の行った病院です。特定療養費の金額は「社会通念上妥当な範囲で」と規定されているだけ。二百床以上の病院での初診料も、百円から六千三百円と大きく幅があります(厚労省調べ)。
特定療養費を取り扱う医療機関は、患者の見やすい場所に特別サービスの内容と費用などについて「掲示」をすることと、事前に患者に治療内容や負担金額などを説明し「同意」を得ることが求められています。厚労省の担当者は、「『掲示』や『同意』がなければ、特定療養費の請求はできない」といいます。
記者も病院側に問題を指摘し、「金額を含めた掲示をし、同意を求めたうえで診療すること」を申し入れ、地方の社会保険事務局に指導強化を求めました。
だれもが安心して医療を受けることのできる制度を作るために、改悪への動きを監視し、患者一人一人が声をあげることが求められます。
(1)高度先進医療の提供
(2)別の療養環境の提供
(3)200床以上の病院の初診
(4)200床以上の病院の再診
(5)180日を超える入院
(6)診療時間以外の診察
(7)予約に基づく診察
(8)前歯部の鋳造歯冠修復または歯冠継続歯に使用する金合金または白金加金
(9)金属床による総義歯の提供
(10)虫歯に罹患している患者の指導管理
(11)医薬品の治験に係る診療
(12)医療用具の治験
(13)薬価基準に収載されていない医薬品の投与