日本共産党

2003年6月10日(火)「しんぶん赤旗」

米英軍の治安活動支援

政府 イラク特措法案概要を提示


 政府は九日、国会内で開かれた与党イラク・北朝鮮問題連絡協議会と緊急テロ対策本部の合同会議で、イラク国内に自衛隊を派遣するための「イラク復興支援特別措置法案」(仮称)の概要と要綱案を示しました。政府は、十一月に期限が切れるテロ対策特別措置法を二年間延長する「改正」案と合わせ、十三日に閣議決定し、国会に提出する方針です。

 概要では、自衛隊派遣の根拠に、対イラク経済制裁解除を求めた国連安保理決議一四八三をあげるとともに、自衛隊の活動内容として人道・復興支援、安全確保支援、大量破壊兵器等処理支援の三分野を盛り込んでいます。とくに安全確保支援活動は、「国連加盟国が行う安定回復活動を支援する」として、現に軍事占領を続ける米英軍支援を鮮明にしています。

 自衛隊の活動地域は「非戦闘地域」に限定し、その認定は政府自らが行うとしています。法案は四年間の時限立法とし、別に法律に定めることで「延長可能」と規定。国会承認は「措置開始から二十日以内」の事後承認です。

 自衛隊員の武器使用基準の緩和は行わないとしていますが、政府は「武器の種類は別」として基本計画などで検討する考えを示しました。また、地方公務員や民間人派遣も想定しています。

 会議では、自民党の青木幹雄参院幹事長が「民主党の同意をとりつけられるよう努力してほしい」と注文をつけました。

解説

自衛隊が占領後押し

 政府が与党に提示したイラク特措法案の「概要」は、政府自身「自衛のための必要最小限を超える」(一九八〇年の政府答弁書)との見解を示していた、憲法違反の占領行政参加を公然と表明したものです。

 実際、自衛隊などの活動は「イラクにおいて施政を行う機関」、すなわち占領統治機構の同意によって行われます。また、三つの「対応措置」のうち、「安全確保支援」は「国連加盟国」―米英占領軍の活動への支援となっており、軍事行動そのものです。

 福田官房長官は「自衛隊の活動は非戦闘地域での活動に限定する」といいますが、今もイラク各地で米英軍に死傷者が発生しており、ブッシュ米大統領も戦争終結を宣言していません。にもかかわらず政府は、非戦闘地域の設定を「みずから行う」とのべています。政府の主観的判断で、自衛隊はどこでも活動が可能となるのです。

 また、法案は四年で失効することになっていますが、「別に法律で定めるところにより延長可能」としており、終了期限も不明確です。

 法案がよって立つ国連安保理決議一四八三は「履行から十二カ月以内に見なおす」ことになっており、決議に定められた措置は流動的です。しかし、効力の長期延長を可能とする内容は、「概要」自身がうたっている「統治機構の設立等に向けたイラクの国民による自主的な努力」を阻害し、米英軍の占領長期化を後押しするものに他なりません。

 法案は、米英軍のイラク戦争を「安保理決議にもとづき行われた…武力行使」と規定しています。つまり、イラク戦争を合法とみなすことを前提にしているのです。

 しかし、国連安保理は一度もイラク先制攻撃を認定していません。法案が自衛隊による復興支援の唯一の根拠としている安保理決議一四八三にしても、イラク戦争を追認するものでないことは、仏中ロなどが言明しているとおりです。

 一方、決議一四八三は、国連がイラク復興に「不可欠な役割」を果たすと議決しています。政府は、占領軍支援の特措法を提出するのでなく、国連を通じての人道・復興支援を行うべきです。(竹下岳記者)


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