2003年6月10日(火)「しんぶん赤旗」
米国のイラク侵攻の最大の根拠は「大量破壊兵器を保持し、隠しているのは間違いない」(ブッシュ大統領の最後通告演説)ということでした。ところが、米英軍がイラクを占領して二カ月もたつのに、いまだに大量破壊兵器は発見されていません。米国防総省が昨秋、「(存在を示す)信用できる情報はない」という機密報告書をまとめていたことも明らかになっています。米英両国ではこの問題を公聴会や証人喚問で追及する動きがありますが、米国の言い分をうのみにして喧伝(けんでん)し、イラク戦争を支持した小泉純一郎首相や与党幹部も、人ごとではありません。
小泉首相はブッシュ大統領がイラクに最後通告をつきつけた三月十八日(日本時間)、大量破壊兵器の危険を言いたてて「フセイン政権に武装解除の意思がないということが断定された以上、アメリカの武力行使を支持するのが妥当ではないか」とのべました。
同二十日の開戦直後の会見でも「危険な大量破壊兵器が危険な独裁者の手に渡ったら、どのような危険な目に遭うか。日本も人ごとではない」という理屈で、イラク戦争支持を合理化しました。
ラムズフェルド米国防長官はフセイン政権の崩壊から一週間後の四月十七日、「米国が見つけられるか疑わしい」と、戦争の口実だった大量破壊兵器の発見を放棄する発言をしました。
この問題を四月二十三日の党首討論で追及した日本共産党の志位和夫委員長は、首相が「大量破壊兵器の保有の有無はうやむやに放置しておけるような問題ではない」(三月二十日)とのべていたことから「うやむや」にせず国連の査察を再開させるよう求めました。
小泉首相は「状況が可能になれば、査察が入るのが望ましい」としましたが、この間、いったいどんな努力をしたというのでしょうか。六日の参院本会議でこの問題を日本共産党の緒方靖夫議員が追及しました。
小泉首相は「国連の査察団が指摘している数々の疑惑にかんがみれば、イラクに大量破壊兵器が存在しなかったとは想定しがたい。米英軍等による大量破壊兵器の捜索活動を注視していく」とのべるにとどまりました。
小泉内閣のイラク戦争支持を「やむを得ない」と容認した公明党が、その立場を合理化するために持ち出したのも「大量破壊兵器の脅威」でした。なかでも「戦争反対は利敵行為」と反戦の声を敵視した冬柴鉄三幹事長は、生物・化学兵器の問題に繰り返し言及しました。テレビなどで、炭そ菌について「スプーン一杯分で約二百万人の殺傷能力がある」と何度ものべ、公明新聞号外にまで書きたてました。
しかし、大量破壊兵器が見つからない現状をテレビ討論で指摘されると、「だからいま探し中だということで。全然ないというわけではありません」「日本の一・二倍の国土に隠されたんじゃなかなかそうは簡単に…」(五月十一日)と開き直り、失笑を買いました。
国連監視検証査察委員会のブリクス委員長は五日、「イラクが十分に説明責任を果たさなかったというだけで大量破壊兵器があるはずだと一足飛びに結論を出すことは正当化されない」と米英を批判しました。
ことは国連憲章を踏み破ってまで強行したイラク戦争の“正当性”にかかわる問題です。米国では「うそに基づいて戦争に突入した」(クシニチ下院議員)という声があがっています。小泉首相や公明党は、みずからの戦争支持の根拠を明確にすべきです。(古荘智子記者)