2003年6月10日(火)「しんぶん赤旗」
八日のNHK「日曜討論」に出演した日本共産党の市田忠義書記局長の発言(大要)は次の通りです。ほかに自民・山崎拓、公明・冬柴鉄三、保守新・二階俊博、民主・岡田克也、自由・藤井裕久、社民・福島瑞穂の各幹事長が出演しました。
イラクに自衛隊を派兵するイラク新法に対し、与党は「(国連決議を)国際社会の要請と受け止め、復興に日本として協力する」(山崎氏)、「自己完結的な自衛隊にしかできないことをやってもらう」(冬柴氏)などとのべました。新法への態度を問われ、市田氏は次のように答えました。
市田 先月の日米首脳会談で「ブーツ・オン・ザ・グラウンド」(地上軍派遣)をということがアメリカから言われ、帰国後検討するという約束をして帰ったわけです。イラクの復興を考えるとき、あの戦争がどういう目的で行われたかというと、「大量破壊兵器の廃棄」が米英の言い分でした。日本政府も与党も、だから武力行使はやむを得ないんだということだったわけです。
最近新聞でも大いに問題になっていますように、その大義がウソ、虚偽で、偽装されていたのではないかということが英国、米国内でも大問題になっている。イラク戦争を支持する理由とされていた大義が、きわめて虚偽に満ちている。
四月二十三日の党首討論で志位(和夫)委員長が、もし大量破壊兵器が問題だというなら、国連査察団を復帰させるべきじゃないかと(追及し)、(小泉首相は)状況が生まれればやるとは言ったが、どんな努力をしているか。そういうことをあいまいにしたまま、とにかく自衛隊を出すというのは、イラク国民も望んでいません。
公明党の冬柴鉄三幹事長が、自衛隊が米英軍の「軍政に参加することにならない。治安維持の支援をしようと自主的、主体的に判断した」とのべ、国連決議を引き合いに出して派兵を合理化しようとしたのに対し、市田氏はこう反論しました。
市田 国連決議一四八三は、確かに米英軍の占領軍としての権限行使を認めています。しかしこれはハーグ陸戦法規、ジュネーブ条約に基づいて、不当な侵略軍であったとしても占領軍はその(国の)治安と生活の復興に責任を持つ、そういう権限を確認しただけです。国連加盟国の復興への協力を訴えることが自衛隊派遣とイコールでない。いろんな復興のやり方があり、日本は国連中心に人道的な食料支援や医療分野などでの支援に限定すべきです。
兵たん支援─後方支援と書いてあるけれど、まだ戦闘行為は続いているわけで、前方も後方もないですよ。いつ後方が前方になるかもしれない。かりに後方であっても、それは武力行使と一体化するもので、新しい植民地支配をもくろんでいる米英の占領軍に事実上協力、加担するということは絶対にやってはならないし、もしイラクの人々が抵抗して向かってきたら、自衛隊が武器を使ってそちらに銃が向けられることも起こり得るわけですから、それはやってはならないことです。
自衛隊の武器使用基準緩和など海外派兵を前提とした議論に対し、市田氏は「イラクの復興、支援のあり方を議論すべきだ。例えば国連開発計画から要請されているのは港の改修や維持管理業務の技術者だ。軍隊や自衛隊などの要求は一切ない」と批判しました。
また、十一月に二年間の期限が切れるテロ特措法の延長について、与党は「必要だ」(山崎氏)とのべ、民主党の岡田氏は「この間の活動の総括をすべきだ」として、政府の説明を聞いた上で判断するとのべました。市田氏は延長に反対し、次のようにのべました。
市田 もともとわれわれはテロ特措法そのものに反対してきましたが、海外に自衛隊が公然と初めて出ていき、実際には何をやっていたかということについては、国会にも報告がない。法の目的通りにやられていたかどうかについてもきわめて大きな疑義がある。
イラク戦争に参加する空母キティホークに、日本の海自補給艦がアメリカの補給艦を介して給油したともいわれ、国会で質問すると「アメリカを信頼している、そんなことはありえないだろうから調べる必要もない」と。こういうことが事実上やられたとしたら、日本の自衛隊がイラク戦争に公然と加わったことになるわけで、そういうことに導くようなテロ特措法の期限延長はやるべきではありません。
イラク新法やテロ特措法改悪のための国会会期延長について、岡田氏は原則として会期内で法案処理すべきだとしながら、個人的意見として「わが国にとって重要なテーマがあり早急に議論の必要があるなら、会期だから閉じていいとはならない」とのべました。
市田氏は、イラク新法強行で会期延長しようとする与党が国際情勢を口実にするのに対し、「国際ルールや国連憲章を守れという世界の流れのなかで、日本こそアメリカに付き従い、孤立の道を歩んでいた。こういう時だけ国際情勢とか国際的な流れに従うというのは、まさにご都合主義だ」と批判しました。