2003年6月10日(火)「しんぶん赤旗」
中国の華僑向け通信社・中国新聞六日付(電子版)は、「有事法制は日本の平和憲法に激しく突き当たる」と題する論評を配信しました。
論評はこの日に日本の国会で有事三法が九割の賛成で成立した背景について、「若い世代の議員の多くが戦争の痛苦を体験しておらず、また日本が侵略戦争の責任をまだ徹底的に清算、反省せず、歴史教育も十分でないことから彼らが平和憲法の貴重さを身にしみて感じず、逆に日本の手足を縛るものとみているからだ」と分析しています。
さらに論評は小泉首相について、「“日本が侵略されたら、あらゆる手段で阻止する”というつもりなのだろうが、彼はかつて日本の侵略を受け、奴隷扱いされた国々に思いをはせることができない。だから彼は、毎年靖国神社に出向き、周辺国の人民の血にまみれた『英霊』に敬意を表するのだ」と指摘。「人々が日本と平和憲法の未来を憂慮するのは故ないことではないのだ」と結んでいます。
二日付の英紙ガーディアンは、「平和主義の殻から抜け出る日本」と題して有事立法についての特別記事を掲載。「米国と同盟諸国の利益に資するため、かつての日本帝国が再軍備をし、自らが課してきた反戦立法のいくつかを捨て去ろうとしている」と指摘しました。
同紙はこのなかで、日本の自衛隊は世界で有数の軍備を持ちながらも、過去の冒険主義を繰り返さないように、その使用には憲法の網がかぶせられてきたと指摘。そうした殻を破って「日本がブッシュ米政権のすすめる有志の連合の一翼をにない、タカ派勢力が理想とするアジアの英国の地位にむかって動いているとの強い印象を与えている」とのべました。
こうした動きにアジア諸国は懸念を強めていると指摘。日本が単独でアジアを侵略することは考えられず、当面は地域における米国覇権の強化につながるが、米国に密着した行動が長期的に続くかどうかは興味ある問題だとのべています。
マレーシアの華字紙南洋商報四日付の論評記事「日本、『軍事的攻撃性』を強める」は、日本の有事法制を「『参戦しない』というタブーを打ち破る新しい法案」と厳しく批判しています。
記事は、「日本は戦争に参加してはならないと定めたタブーを打ち破る新法案は、地方行政や国民、民間機関の財産を支配するうえで内閣により大きな権力を与え、従わない者や法律を軽視する者は懲罰を受ける」と指摘。「日本の首相が指導する安全保障委員会の権力の範囲も広がっており、戦前のようにかんたんに国民の人権を侵せる」とのべています。
また、「軍事的野心をますます大きくする日本がこれまで通り平和憲法の非戦の精神と『専守防衛』、武力で他国を威嚇しないという大原則を堅持するかどうか注意を払うべきだ」と指摘。「もし日本がこの重大な原則から離れ『攻撃性』を強めれば、日本は本当に歴史上のかつての道を歩もうとしているということの証明になる。それはアジア諸国にとって間違いなく新たな脅威である」と強く警戒しています。