2003年6月11日(水)「しんぶん赤旗」
米と水田農業への責任を国が放棄する主要食糧法改定案が衆議院で与党の賛成で可決され、論戦は参議院に移りました。日本共産党国会議員団農水部会長の中林よし子衆院議員に論戦の特徴と農業と食料を守る共同の広がりについて聞きました。
――全国調査をふまえての国会論戦になりましたが…。
中林 主要食糧法改定案は、農水省が昨年示した米政策改革大綱をもとに出てきた法案です。
いま水田の四割は減反です。それでも生産者米価が暴落し、米の輸入が本格化してから農家収入は一兆円以上減っています。耕作放棄地がどんどん増えて、農業の担い手が十分できない。その原因は、政府が新潟県の生産量を超える外国産米を輸入して、米価下落を野放しにし、農産物の価格保障をしないことにあるんです。小泉内閣は、この原因を解決しようとせず、米の生産と流通をいっそう市場原理まかせにすることを「改革」といって、すべての責任を生産者や農業団体に押しつけようとしているのです。
私たちが訪ねた滋賀県の農業生産法人の社長は保守系の議員ですが、「もうこれ以上米価が下がったらお手上げだ」といいます。耕作できなくなった農家から委託を受け百ヘクタールつくっていますが「この町の田んぼも“万歳”(お手上げ)になってしまう」と心配します。
国会ではこうした現場の声をもとに論戦をおこなっています。
――論戦はどういう特徴がありますか。
中林 政府与党が、農業振興の展望をもってないことははっきりしました。大規模農家や法人経営で米生産の大部分をになうといいますが、米政策改革大綱取りまとめの中心になった人でさえこの達成は「難しい」というほどです。「米作りの本来あるべき姿」は計画の段階ですでに破たんしているといっても過言ではありません。答弁でも「地域で良く話し合い主体的に決めてほしい」というだけです。
私たちは、安定供給するために生産・流通・販売まで国の関与が必要だと主張してきました。生産者価格の下支え策、価格保障です。それはWTO(世界貿易機関)の協定上も問題ないことを明らかにしました。
ミニマムアクセスというのは米の義務輸入ではありません。“ほとんど輸入がない農産物は国内消費量の3〜5%の輸入機会を保障せよ”というものです。麦やトウモロコシなど穀類といっしょに「穀物分類」にくくれば、国内消費量の七割以上も輸入していますから、ミニマムアクセスの必要がなくなり、米まで輸入しなくてすみます。EUは「肉類」として牛肉や豚肉などをいっしょにしています。農水省も理論的にはできると認めています。
――野党の協議がおこなわれたそうですね。
中林 稲作や水田減反問題では、他の野党のなかには“もっと市場原理の導入が必要だ”という議員もいました。日本共産党は農水委員会では価格保障と所得補償の充実を何度か主張してきましたが、なかなか他党と共通の議論の場ができなかったのです。
そういう点では、今回野党で対応を協議したことは情勢の反映だと思います。この背景には、「政府案では米も地域農業も食も守れない、大変だ」という世論と運動があると思います。昨年のBSE(牛海綿状脳症)の問題では、農民連や食健連の運動もあり、野党提案をもとに対策法案ができました。その後も輸入牛肉の生産・流通の履歴表示を求める共同修正案に発展するなどの経験も生まれました。
今回は、大資本の米流通支配の問題などでは一致することができず共同提案には至らなかったのですが、日本共産党の意見も反映され、野党協議では初めて所得補償という考えが明確になりました。米価の下支えが必要だと議論され、需要を超える分を政府が一定価格で買い上げる案は意義があったと思います。
こうした経過から政府案には反対ですが、民主・社民の提案となった野党案には賛成しました。
食料を輸入にたよっていては安心できないという世論は大きくなっています。学校給食への地場産農産物の利用をはじめ「地産地消」の運動も広まっています。中小農家を切り捨てては、供給は成り立ちません。こうした運動と共同し、農業の再生と食の安全・安心にむけいっそう頑張りたいと思います。